くますけ

この国の空のくますけのレビュー・感想・評価

この国の空(2015年製作の映画)
4.0
こういう戦争もあったんだろう。
抑圧されながら、ぎりぎりの最低限だけは手にしたいと欲している。

常に死を隣に恐れながら、死ななければ何を失ってもいいと言いながら、
だからこそ届くならもう少し上をと手を伸ばす。
「どうせ死ぬならせめて」

せめて人間らしく死にたい。
血縁の姉妹でも食いぶちのために排除する妹の冷静。
姉の開き直り。
そして娘は妻子ある男にもて余した身体を委ね、母は女にもならずに死ぬよりはと娘と20も離れた男とのそれを望む。

すべては欲求だ。
抑圧されて高まった欲求の生々しさ。
だから食事のシーンが官能を漂わせる。
恋愛ではない。
埃の積もった廊下や皮脂が染みた枕を嫌悪しながら、男とはどういうものか、興味が深い。
それは思春期を男親なしに育った里子だからかもしれない。
選択肢のないことをひたすら受け入れる生き方しかない時代。

ふみちゃんの台詞回しや所作はまるで銀幕の女優たちのようで美しかった。
また畳でごろごろしてるけどパンツは見えない(笑)
ハセヒロは得意のキザっぽさがいきすぎてるところもあったけど、濡れ場のエロさはお墨付き。
河原での親子のシーンは里子の肉体の、心の変化がよく見えていい。
淡々とした日常に徐々のなかで近づくふたりの距離感にざわざわする。

観客に読ませるところが多いけれど、難しくはないので分かりやすい。
私たちの知ってるステレオタイプの戦争とは違うかもしれないけど、それって白黒の記録映像でしょう?
本物の、リアルは、今私たちがみてる景色と変わらない、カラーなんだよね。
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