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僕等がいた 前篇のAYHのレビュー・感想・評価

僕等がいた 前篇(2011年製作の映画)
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この映画、中学3年生の終わり頃に親友と観に行ったな。懐かしい。でも原作があまり尊重されてなくて悲しくなった記憶がある。合唱コンクールのシーンとか漫画にないし、矢野が七美にプレゼントするリングもデザインが全然違うし...。

先日、久しぶりに原作を読み返した。キラキラした高校生編がメインと思いきや、この漫画の肝は大学〜社会人編で、『高校時代、今が永遠だと思えるような一瞬をくれた相手と、その相手とのかけがえのない思い出と、大人になってからどう付き合っていくか』というのがテーマなのかもしれない、と思った。それでいうと、矢野と七美が結ばれる結末はおかしいんだけどね。千見寺アキちゃんの『忘れなくたっていいじゃん。大事な思い出は心の隅の箱にしまっておいて、それで時々箱を取り出して、ふたを開けて、懐かしめばいいんだから』っていうのが、多分正解なんだよ。

『むしろ年々存在感が大きくなっていくみたい。出会いがあればあるほど、環境が変わってとりまくものが変われば変わるほど、ああ、あんな人はどこにもいないって思い知らされるの』

『大人になった私達が 永遠などないと知っている私達が けれどもあのとき時間は止まって この世には私達しかいなくて この瞬間は何よりも真実で 夢のようで 一瞬のようでもあり 永遠にも感じられた まだ若い私達の心の中に 確実に永遠はあったのだと』

リアルタイムで読んでた時は何も刺さらなかった、最終巻の最後の言葉『あなたにも、思い出はいつも、優しくありますように』が良かった。そう思うのは、私が年齢を重ねて思い出を振り返る立場になったからなんだろうな。

小畑友紀さんの漫画は北海道の空気感が色濃くて胸がぎゅっとなる。『スミレはブルー』が1番好き。Roses are red, Violets are blue, Sugar is sweet and so are you. バラは赤、スミレは青、砂糖は甘い、そしてあなたも。
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