エレーナ・アンが美しい。髪が風に揺れる姿やふとした視線に息を呑んだ。全体的に映像美を堪能できる作品だけど、それを支えてるのは彼女の佇まいの美しさ。全く喋らないしあまり表情もないけど決して人形みたいな訳ではない。透き通る瞳に凛とした生命力を感じた。
最初から最後まで台詞がない分、登場人物の表情、仕草、行為や情景が意味するものを汲み取ろうと集中させられた。台詞があったら掻き消されてしまう。台詞がないから良い。
象徴的なシーンの連続で全体の空気を作っている作品だと思う。特に良かったのは太陽を食べるところ、スクラップした葉っぱをそっとめくるところ、物干しに並ぶシャツが風に揺れて抱き合うように見えるところ。こんなささやかなこともちゃんと幸せなのだとしみじみした。ラスト直前は夢のようでうっとりする。
あと二人の青年のバトルが好き。純粋な恋だなぁ。
そんなこんなで見る側の心もすっかり繊細にさせられた後、ラストシーンがやってきた。あまりにも呆気なくて、ショックというより全部夢だったのかなという気持ちになってしまった。
