レミー

もしも建物が話せたらのレミーのレビュー・感想・評価

もしも建物が話せたら(2014年製作の映画)
4.0
ポスターを一目見た時から絶対に観たいと思っていたこの作品は、個性豊かな建物たちが人格を与えられて語るドキュメンタリー。美しく、よく手入れされた建造物は、見ているだけで何でこんなに心踊るんだろう!
6人の監督たちがそれぞれ思い入れのある建物を撮ったオムニバス形式で、建物に吹き込まれた性格は様々。控えめだったり、自分を誇りに思っていたり、文学的だったり。しかしまあ、全員よく喋ること。
「無口な物こそ雄弁だ」というキャッチフレーズはその通りで、それぞれの建物に刻まれた歴史や、関わった人たちの思いを表したら、こんなに言葉に溢れているのかと驚いた。

①ベルリン・フィルハーモニー
★★★★
半世紀前に建てられたとは思えない、モダンで美しいホール。日々行われている修復はとても繊細で、このホールが現在でも輝きを失わない理由が分かる。
たまに観ているベルリンフィルのネット配信動画はこんな小部屋で編集されていたのか!という発見や、代々首席指揮者が使ってきた指揮者室に潜入できたりしてとても楽しい。
ラトルのドビュッシーもいい感じだし、所々挿入されるヴィムヴェンダースお得意の白黒カットもかっこよくて、とにかくワクワクする作品!!

②ロシア国立図書館
★★☆
国立図書館なだけに、ちょっぴり耽美主義で文学に傾倒したオタクキャラがかわいい。ロシア文学?が多く引用され、難解風味。ちょっとボーッとして他のことを考えてたら、意味深な一節が右耳から左耳へと抜けていった……。
建物の第一印象としては、まずその重厚感に圧倒!カードの入った引き出しが積み重なった巨大な棚は、ちょっとくらい傾いていたって気にしない。歴史の陰も陽も見てきた博識な建造物なのでした。

③ハルデン刑務所
★★★☆
主人公が壁というのが面白い。他の5つの建造物が人々に愛されてきた中で、刑務所は少し異質だ。
まず、刑務所という施設がこんなに明るくモダンで心地よさそうなことに驚く。しかしその中で行われている事は、徹底的な監房内の捜索(麻薬など)や糞便の清掃などで、そのギャップがすごい。
無機質で静かで、運動する人がいたり仕事をする人がいたり。刑務所が学校や病院らしいというのも、少しわかった。

④ソーク研究所
★☆
とても正統派、悪く言えばありきたりなドキュメンタリー。定点観察は美しいが、ちょっとくどい。
幾何学的な輪郭を持つ建物は、研究所の近未来的イメージをよく表現している。遠くから見ると、古代遺跡のようでもあり集合団地にも見える不思議な建物。結局ソーク研究所がどんな施設なのかよく分からなかった。
しかし、建物の中央を流れる水が奥に広がる海に注ぐように見える景色は圧巻で、この建物を撮りたいと思った気持ちはよく解る。

⑤オスロ・オペラハウス
★★★☆
白くて美しいオペラハウス。雨の日も晴れの日もそこに佇み、市民を受け入れる。バレエやオペラが素晴らしく、そのコンテンポラリーな演目も良かった。
オペラハウスの屋根が道になっていて歩くことのできる設計がすっっごく私好み!行ってみたい!

⑥ポンピドゥー・センター
★★★
白い鋼鉄の柱が何本も突き刺さり、その間を縫うように透明なトンネルが宙を走る。少し時代を感じさせるが、とても粋なデザインだ。ナレーションのどっしりと構えた中年男性のキャラクターは、ポンピドゥーセンターにとても合っていると思った。
このセンターは、図書館・現代美術館・映画館・ホールが複合したパリの文化の発信地である。センター内で息づく芸術のエネルギーと共に、建物が生きているという感じが良かった。
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