原題がNight Moves（夜遊び）なのに邦題が『ナイト・スリーパーズ ダム爆破計画』って真逆じゃないか。B級ホラーみたいな日本版ポスターもあいまって本当にケリー・ライカートの作品なのか疑いながら見たけどファーストカットで「本物だ」と安心した。
ファーストカット然り、ライカートはPOV（主観ショット）の名手だと思う。
本作ではそういう怖いPOVがミニマルなカット割りの中で随所に効いていた。
その代わり、「今ここにないもの」は無理に撮らない。
例えば彼らがそんなとんでもないことをする動機とか過去のきっかけとか、そういったものは冷徹なほど見せてくれない。
いつも通り回想シーンは皆無だった。
極めつけに、「ダム爆破計画」という邦題が詐欺になってしまうほど、爆破の瞬間は「遠くの爆発音」として間接的に描かれるのみで、そのあと報道写真も報道映像も一切劇中に出てこない。低予算だからではなく、必要ないから。
自分の映画に何が必要かをあまりにも熟知しているから、「どうしてそう撮ったのか」とライカートに尋ねたらどのカットも細かく説明してくれそう。
