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ズートピアのLCのレビュー・感想・評価

ズートピア(2016年製作の映画)
4.1
しょっぱなもしょっぱなで吹き出してしまった。
ギデオン・グレイという名のキツネが出てくるが、プロレス界では知る人ぞ知る名だ。見終わった後、試しにGoogle検索すると、「ギデオン・グレー、架空のキャラクター」の説明と共に彼の写真が出てきて大笑いしてしまった。因みに声は全く別人だった。

そして、ガゼルのビジュアルと流れ出す音楽に「シャキーラっぽい!」とテンションが上がる。主人公よりうっきうきだったかもしれない。
まさか本当にシャキーラだったとは!南米音楽に、ベリーダンスのように腰を動かす踊りを合わせる、まさにシャキーラの特徴だ。
彼女はスペイン語圏では知らぬ者のない歌姫だ。それどころか、サッカーW杯(2010、本作公開の6年前)のテーマソングも歌ったことがあるので、当時W杯が見られた国、地域に彼女の歌声は既に響いたことがある。まさしく世界を股にかける歌姫だ。
草食動物も肉食動物もみんなが夢中になる歌姫、ガゼルを託すに相応しいと思える。ただの贔屓目かも。

哺乳類に限っているとはいえ、様々な動物がひとつの街に暮らす姿には感嘆する。まさに、「あらゆる動物が暮らしていく為の設計がなされている」と感じる。
しかしこの感動が深いほど、警察署内の設計に強く打ちのめされる。受付もトイレも机も椅子も、身体が大きい者のみを考慮した設計だ。主人公が夢と希望を抱いて入った世界を端的に思い知らせてくる。

草食動物はこう、肉食動物はこう、と決めつけられることに敏感で、そこに抗う意識のある者でも、自身の中にある偏見に気付くことは難しい。それはそうなんだが、私は「本来の姿」「本能」というものの存在を思う。
肉食動物は草食動物を食べていた、それは事実彼らの生きる世界でも歴史として残っている。
現在進行形では見かけなくなったその「本能」とやらは、肉食動物たちがお互いに、その本能を行使してはならないという価値観を共有し合う過程を経ただろうか。
「まあ、腹が減っている時に目の前を草食動物にうろつかれたら、ガブリといっちまっても仕方ねえさ、本能なんだ」と、肉食動物同士で庇い合っていたら、今のズートピアの姿は無いように思う。
そうだとすれば、主人公のマイク前での発言は、重みが増す。不確かな考えを無責任に拡散してしまった。

ニコラスさんはフレッシュに頑張る若い主人公を揶揄ってはいたものの、主人公が未だ持っていない強みを、彼女より少し長い人生経験の中で手に入れていたと感じる。
世間がそう思い描くなら、そのように生きてやる。この選択を、社会に選ばされるか、自分で選ぶかは、雲泥の差があるように思う。
悲しんで慰め合うより、弱った姿を見せるより、今追うべき問題に、目の前に集中する。
そして、ぶち当たった壁の前で、それでも乗り越えたい、と涙を流す友に胸を貸す。
かっこいい大人って感じ。こんな大人になれてる?いや私のキャラとはだいぶ違うけども。

本作、どのキャラクターもかなり強く印象に残る。影の薄いキャラクターの少なさに驚く。哺乳類に限定してこれか…爬虫類とか加わってたらどうなってたことか…
途中出てくる公式による海賊版イメージはかなり楽しかった。ラプンツェルやモアナ、ベイマックスが印象に残る。モンスターズインクもなかった?
見終わった時にわいわい話せるネタがたくさんあって、それも良い作品度を上げているのかも。
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