鹿江光

ズートピアの鹿江光のレビュー・感想・評価

ズートピア(2016年製作の映画)
3.5
≪70点≫:抑圧と差別の先にある理想。
超ド級の寓話をごく自然にやってのけるディズニー。さすがディズニー。理想国家と言えども、根底では明確な抑圧と差別が人為的に起こされ、最大多数の幸福を得るための操作が為されている。理想郷は常にマジョリティの意志によって構築され、マイノリティはとことん「ゼロ」へと還元される。トマス・モアの言葉をなぞるなら、まさに「ズートピア」には、非動物的な管理社会の色合いが根付き、決して「自由」で「牧歌的」なアルカディアではないのだ。
そんな現代社会が目指し、そして抱える「自由」「平等」「博愛」という問題を見事に寓話に変換したのが本作だ。映るもの、見えるものはとてもファンタジーで愛くるしい。しかし、これらの要素を全て現実の基準で置き換えると、とてつもなく恐ろしい、身に迫る世界が現れる。
我々が自由や平等と謳っている事柄は、はたして本当に最大の幸福へと繋がるのか……。それとも、ごく僅かな死体の上に築き上げられた人為的な象徴であるのか……。もちろん現実で真の意味での平等などあり得ない。天秤を平らにするのではなく、均衡を保つために加減を操作する。理想郷はあくまでも理想だ。しかし実現するには問題が多すぎる。もし実現するのなら、我々は「平等」という言葉の意味を忘れる必要がある。
まぁそんな面倒なことは置いといて、やっぱりキャラに魅了されて、内容もコミカルでサスペンスフルで、1秒たりとも飽きが来ない。まさにディズニークオリティでした。ジュディの眼が可愛い。表情が可愛い。お尻が可愛い。禁断の扉が開きそう。
鹿江光

鹿江光