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われらが背きし者のseahawkのレビュー・感想・評価

われらが背きし者(2015年製作の映画)
4.4
ジョンルカレのイメージから、後味の良さは期待せず、残忍さや難解さは覚悟して観ることに。
結論、やはり容赦ない残酷な出来事はありつつ、思っていたよりずっとハッピーエンド(むしろ出来過ぎなくらい)だし、ストーリーは易しくて…
スカルスゲルドは悪い人なのか?ユアンは道を外すのか?という疑いから、途中からは、無事に主人公たちの願いが叶うのか、きっと叶わないんだろうな、だとしたらどこでどう悲劇が起こるのか?
なんて、ハラハラしっぱなしで、夢中で観た100分強。尺の長さも適度。

女流監督の上品な演出も、久しぶりに美しいユアンマクレガーも、マフィアを好演するステランスカルスゲルドも大好きだったが、個人的にささった台詞がある。

「彼女(奥さん)を手放すな。それだけが大事なことだ。他のことはすべてくだらないからな。」

この人、命がけで金儲けして仕事してきたのに。生き残るために何度も法を犯してきたのに、家族以外は「くだらない」と。
結婚するくらい惚れた相手なら、愛することは簡単なはず。けれど、実際は家族と向き合う時間よりずっと仕事している時間の方が長い。くだらないはずの仕事で出世しよう、成長しようとしてもがかなくてはならない。相手のことばかり考えてはいられなくなる。
愛し合い続けることは、当たり前の様で、実際かなり骨が折れる。だからこそ、本当に家族を大事にすることに失敗した年長者から、やはり既に失敗はしている男へのこの助言は、重みがある。いま自分が必死になっていることは家族に比べたらくだらないことのはずなのに、言い聞かせておかないと、人は簡単に大切なものを見失うのだ。

マネーロンダリング絡みのサスペンスでありながら、壊れた夫婦の再生の物語として、見応えがあった。
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