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トイ・ストーリー4のunknownのレビュー・感想・評価

トイ・ストーリー4(2019年製作の映画)
4.3
2019/07/14

トイストーリー三部作で完璧なまとめ方をして、4がやると知ってから不安だったのですが、ピクサーが中途半端な作品を作るはずがないとも思ったりもして、不安と期待の両方がありました。
結果としては流石はピクサー、テーマ設定が非常に意識の高い素晴らしい映画になっています。と同時にそれはだめだと思ってしまうところがあるのも事実で、賛否の両方に落ち着いてしまいました。

まずいいところは、当然ウッディのお話。
一つ目のテーマが、アンディのおもちゃという「父」としての役目を終え、ボニーにもらわれるわけですが、今作のウッディは子育てを終えた大人のその後の話で、これからの人生の目的がわからなくなってしまう、まさに、迷子の状態を描いています。
「トイストーリー」という作品は
オモチャ(クリエイター)が子供(観客)を楽しませるという構造はまさに映画作りと同じですし、子を持つ大人が四苦八苦するのは「トイストーリー」を作るクリエイターそのままの話です。
その作り手たちが、子育てを終えてどうしていいのかわからなくなるというのは、非常に個人的な物語で、とても普遍的だと思います。
そしてその喪失感への回答として新しい世界へと踏み出すこと、自由になることを描くというのは、いくつになっても可能性は開かれているのだという、非常にポジティブで素晴らしいメッセージだと思います。

また、今までの作品を通してウッディが言い続けている、「オモチャ」としての役割、子供を楽しませる、或いはそばにいるという使命が、実はウッディ自身を一番縛り続けているというのは皮肉な話で、そこからの解放というのが二つ目のテーマになっています。
ゴミから生まれてオモチャになったフォーキーもゴミという役目?からオモチャへと自由になることを描いているし、ボーもひとりのオモチャから自由になり、好きな生き方を見つけています。(特にボーは昨今のテーマでもある自立した女性を描いています)。
ギャビーギャビーの生まれた時から不良品で求められることを知らないというのも、とても切実な悩みとして胸に刺さります。
決められた何かからの解放はとても今日的で胸に刺さるテーマです。
そのほかフォーキーがオモチャになるってことはオモチャの定義ってなんなんだろうとか、ボーかそれまで何をしていたんだろうとか、ウッディの選んだ選択についてとか、ボーの質感表現とかすごいなとか、話したくなることばかりで基本的にはとってもよくできた、というかテーマとかは明らかに他のアニメーション映画の先をいっているし、素晴らしいと思うんです。

ただどうしても引っかかってしまうのが、というより結構アウトなのが、オモチャ世界が人の世界への関与が大きすぎるという点です。
「ファインディングドリー」のドリー周りの話が大号泣するほど好きなのに、あまり乗れなかった理由と近くて、人の見えない所にワンダーがあるから素晴らしいのに、それが人世界に影響を与えすぎると違和感があるように感じるのです。
特に「トイストーリー」は小さい頃あったあるある(知らない間にオモチャが移動してるとか、見つからないけど実際近くにあるとか)が実はこうだったら楽しいというのが肝で、夢があったんです。
そのリアリティ?ラインが揺らいで車をパンクさせたり、街の中を移動させたりするのはちょっと違うなと。
さらに言えば子供の世界ならオモチャの世界に近くても、目を瞑れると思うのですが、大人にまでオモチャの声が聞こえてしまったらそれはホラーですし、なんでもありになってしまうような気がします。
そこは結構シビアなとこだったんじゃないかと。
ただそこまでは素晴らしく意識の高い作品でして、節目の世代にもまだまだ知らない世界はあるというメッセージと、決められた役割から自由になるというテーマは非常に素晴らしいので、アンビバレントな気持ち含めて、やっぱり好きな映画です。

トイストーリー三部作はアンディ(我々観客側)の物語であり、それで完結していて、4は独立したウッディ(クリエイター)が解放されるという、その後のストーリーとして観ればなんだかスッキリします。
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