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タン・ウォン~願掛けのダンスのhorryのレビュー・感想・評価

3.0
2013年のタイ映画。エリート家庭の優等生、アニメやマンガ好きなオタク、卓球少年、K-popダンスに夢中の不良っぽい男子高校生の4人が主人公。彼らが祠の神様に願掛けをしたので、その御礼にタイの古典的踊り ตั้งวง をしなければならなくなり……という、それまで仲良くなかったメンバーが目的に向かって力をあわせる物語かと思いきや、そうならないのが面白いところ。

クーデターが勃発していたタイの状況(卓球少年の父は赤シャツ派)がデモや、市民への攻撃として描かれていたり、そうしたタイから離れて海外に行くことで成功者になる道を良しとするエリート層といった政治的な背景がベースにある。
それと、タイ以外のサブカルチャー(K-POP、日本のマンガ・アニメ、アメコミ、オンラインゲームなど)に囲まれている今どきの高校生が、「願掛け」と神様へのお礼という古くからの文化も生きているという描写がうまく絡み合っていた。

旧来的な価値観と、新しい文化や価値観の衝突であり、一つの方向に向かっている訳でないということが、こういう形で描かれるのは面白いと思う。
ただ、トランス女性に対する侮蔑的な言葉が出てきて、そのまま放り出されたままなのはキツい。タイは性の多様性を認めている国、という表現をよく見るけど、こういう描写を見るとほんとにうんざりする。残念。
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