青山

玄海灘は知っているの青山のレビュー・感想・評価

玄海灘は知っている(1961年製作の映画)
3.7

1944年、日本軍の兵士として徴兵され名古屋に入営した朝鮮人の青年ア・ロウン。朝鮮人への差別が罷り通る日本軍のしごきを受けながらも、やがて日本人の女性秀子と出会い、彼女に恋をするが......。


キム・ギヨン傑作選より、わりと初期のモノクロの作品。
ところどころで映像や音声が結構たっぷり欠落しているのが残念なのですが、内容はとても良かった。

「日本軍50年の伝統」とか言いながらクソみたいなイジメをする日本人たちがあまりにもクソすぎていっそ笑ってしまうし、それに毅然と立ち向かう主人公のア・ロウンさんがかっこいい。「ア・ロウン」というのは韓国でも一般的な人名ではなく、aloneから取ってるとか説があるらしいですが、彼がその名の通り孤高の存在として描かれることで、国籍を超えた人間というものの在り方を教えてもらえるようで、ロウンさんをめちゃくちゃ応援しながら観ました。
一方で日本人たちもただの悪人としては描かれず、クソなんだけどどこか同情の余地があるのも良かった。どうしても自分が日本人なのでバイアスがかかった状態で見てしまうところはあるけど、嫌な奴にしてもキャラクターとして魅力的に描かれています。

戦争を描いた作品ではありながら戦闘シーンなどは少なく、本筋はメロドラマ。
濡れ場(?)の全く直接的に映さないのにめちゃえっちなところとか、あの状況でのキスシーンとかとても良かった......。
立場の違いに阻まれる恋という題材ながら変に御涙頂戴的にならずところどころユーモアすら感じさせるのが良くって、それでいてラストシーンなどに顕著ですが個人的な愛からしっかり反戦を感じさせます。
重いテーマをきっちり描きつつほどよい抜け感があることで説教臭さを免れている感じと言いますか。しかしあのラストシーンはなかなかインパクト強くて良かった。

あと、個人的に好きなのがロウンの友人の鈴木さんの笑い方。気持ちの良い笑い方すぎて出てくるだけでこっちも笑っちゃった。
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