ウスバカゲソウ

ナイトクローラーのウスバカゲソウのレビュー・感想・評価

ナイトクローラー(2014年製作の映画)
4.0
サイコパスを主役にして見事に成立させた犯罪ドラマ。
一切共感できないキャラクターを主役に、ジャンル映画的な面白さもしっかり見せる。
それでいて露悪的になり過ぎないバランス。

ジェイク・ギレンホールが本当にどうかしている。
公開されたスチールを見てリアルにおかしくなったと心配した思い出。
『プリンス・オブ・ペルシャ』の失敗が響いたのかと。
それくらいのサイコパス振り。
一見普通の人、なんならイケメンに見えてしまうのが恐ろしい。
撮り方もちょっとカッコいいから困る。
パパラッチ場面はさながら銃撃戦のよう。
レネ・ルッソも触発されて過激化していくが、あくまでよくいる悪役レベル。
ギレンホール演じるルイスの無敵感、実在感。
「人は孤独に生まれるのではなく自ら孤独になる」
孤独故に自己完結し補強されていく自尊心と肥大化する承認欲求。
夜のロスを這いまわる孤独な怪物。
彼のサクセスストーリーはある種のカタルシスすら生んでいる。

もう一つの主役はやはりロスの街だろう。
映し出される晴れやかな昼と孤独でじめっとした夜。
野生。
パパラッチはまるで死肉をあさる捕食者。
撮影のロバート・エルスウィットは監督の実兄トニー・ギルロイの『フィクサー』が印象深い。
あれも夜の都会が美しかった。
キノコのように乱立し毒電波を放つ電波塔。
スクラップヤード。
ガソリンスタンド。
中華レストラン。
夜も動き続ける市井の暮らし。
豪邸への”突入”は『マイアミ・バイス』のような臨場感と緊張。

ルイスを見ていて背筋が凍るのは、現実にも似たような人間が溢れていることか。
人を傷つけることに頓着がなく、口八丁手八丁で乗り切る、取り繕う。
彼のサクセスを否定しつつ楽しんでいるのは、どこか共感、似ているところが自分にもあるのかもしれない。
ゾッとする。