サイコパスを主役にして見事に成立させた犯罪ドラマ。
一切共感できないキャラクターを主役に、ジャンル映画的な面白さもしっかり見せる。
それでいて露悪的になり過ぎないバランス。
ジェイク・ギレンホールが本当にどうかしている。
公開されたスチールを見てリアルにおかしくなったと心配した思い出。
『プリンス・オブ・ペルシャ』の失敗が響いたのかと。
それくらいのサイコパス振り。
一見普通の人、なんならイケメンに見えてしまうのが恐ろしい。
撮り方もちょっとカッコいいから困る。
パパラッチ場面はさながら銃撃戦のよう。
レネ・ルッソも触発されて過激化していくが、あくまでよくいる悪役レベル。
ギレンホール演じるルイスの無敵感、実在感。
「人は孤独に生まれるのではなく自ら孤独になる」
孤独故に自己完結し補強されていく自尊心と肥大化する承認欲求。
夜のロスを這いまわる孤独な怪物。
彼のサクセスストーリーはある種のカタルシスすら生んでいる。
もう一つの主役はやはりロスの街だろう。
映し出される晴れやかな昼と孤独でじめっとした夜。
野生。
パパラッチはまるで死肉をあさる捕食者。
撮影のロバート・エルスウィットは監督の実兄トニー・ギルロイの『フィクサー』が印象深い。
あれも夜の都会が美しかった。
キノコのように乱立し毒電波を放つ電波塔。
スクラップヤード。
ガソリンスタンド。
中華レストラン。
夜も動き続ける市井の暮らし。
豪邸への”突入”は『マイアミ・バイス』のような臨場感と緊張。
ルイスを見ていて背筋が凍るのは、現実にも似たような人間が溢れていることか。
人を傷つけることに頓着がなく、口八丁手八丁で乗り切る、取り繕う。
彼のサクセスを否定しつつ楽しんでいるのは、どこか共感、似ているところが自分にもあるのかもしれない。
ゾッとする。