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神々のたそがれのkogureawesomeのレビュー・感想・評価

神々のたそがれ(2013年製作の映画)
4.6
黒澤明とベルイマン、タルコフスキーとクストリッツァ、オーソン・ウェルズとフェリーニを思わせ、スケールのデカさを感じるSF映画。
と言っても、最初にナレーションで説明されるだけで、宇宙船とかは出て来ない。地球よりも800年ほど遅れた文明を持つ星に降りたった地球の宇宙飛行士たち。
彼らは中世ヨーロッパのような世界で神のように扱われる。
しかし、暴力と差別、血と泥と唾と汚物にまみれたその星で、「神々」は何も出来ず、見ているしか無い。
原作の邦題は「神様はつらいよ」

ブリューゲルとかギュスターヴ・ドレ、ヒエロニムス・ボッシュの描く世界の中にカメラを突っ込んだ、もしくは中世ヨーロッパもどき星のドキュメンタリーのようでもある。

雨ばかり降っている。
画面をいろんなものが横切り、独特すぎる面構えの役者たちは所々でカメラ目線。白黒だが、白と銀と黒のようでもある。
悲しげなジョン・コルトレーンのフリージャズみたいなメロディーを不思議な楽器が奏でる。
ものすごく遠くまで連れて行ってくれる映画。

パンク歌手で作家の町田康は「1回見ただけでは何がなんだかわからんと言う感じですが、わかる必要はないと思った」「主題はわかりやすい。未開の状態の人間をちょっとましな状態の人が見て、しんどいなという話」本作を2度鑑賞し「全く退屈しなかった」「何よりも素晴らしいと思ったのが、何かが決定的に上手くいかない感覚がすごく良かった。しんどいとか、汚いと思う人もいると思いますが、その世界がおもしろかった」と言っている。

マーティン・スコセッシが、ゲルマン監督の前作「フルスタリョフ、車を!」を観て「何が何だかわからないが、凄いパワーだ」と唸ったという。
この映画を観て、全く同じ感想を私も持った。
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