ろく

隣人ポータビリティのろくのレビュー・感想・評価

隣人ポータビリティ(2007年製作の映画)
3.9
オランダの実験だっけ。

人生が上手くいっているグループといってないグループに分けて「お金持ちの若者が自動車事故で死んだ」っていうニュースを見せるのよ。で、上手くいってないほうは「自業自得」だと言うんだけど、上手くいっている方は「哀しい事故だ」と嘆くのが多かったという話。

自分の不満がそのまま「不寛容」に移行するだけなんだよね。この映画でもそうなんだ。「上手くいってない」主人公は隣人の喘ぎ声で激昂するの。でもね、この映画はやはり城定らしい優しさに満ちているんだ。そんな「上手くいってない」は限りなく「寛容」な隣人によって少しづつ氷解する。その「溶け方」がなんとも上手でないか。

最後のシークエンスなんか手を叩いてみてしまった。そこにあるのは不寛容な自分が寛容になる瞬間、それはまさに宗教で言うところの「許し」の瞬間だよ。少しの「ミス」も許さない今の人たちに見て欲しい。大事なのは他者をあげつらうことでなく「許す」ことなのにねえ(ラヴィットの山添の件なんかほんと勘弁してほしい)。

城定初期の作品だけど「らしさ」健在である。人間屑だらけである。だから許してあげてよ。そして自分も許しなよ。
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