デパルマ

シビル・ウォー/キャプテン・アメリカのデパルマのレビュー・感想・評価

3.5
『大いなる力には大いなる責任が伴う』もはやアメコミでは語り尽くされたテーマに、ここまで真正面から向き合っている映画は初めて観た。オバマ政権時のドローンによるテロリストの攻撃などをモチーフに前作『ウィンター・ソルジャー』では、多くの人を救うために少数の人を危険にさらしてよいのか、を裏テーマとして描いた。またスタークのせいで街を破壊しまくった『エイジ・オブ・ウルトロン』は、ヒーロー街壊し過ぎ問題を指摘せずにはいられない映画だった。それゆえに、アベンジャーズが、自分達の闘いが市民に及ぼす莫大な被害をモニターでまざまざと見せつけられ、苦悩する場面は胸に迫るものがある。彼らの口論は、『アベンジャーズ1.2』のような子供の好き嫌いの口喧嘩ではなく、ヒーローそれぞれがこれまで体験した闘いによって形成されたそれぞれの正義の形だし誰も間違っていない。

また、番外編的な扱いを受けていた傑作『アイアンマン3』をなかったことにせず、むしろあの物語の上で今があるとする乱暴な改変は『アイアンマン3』で泣いた身からすれば少し寂しい気もするが、プロットホールを削除するという意味では納得の賢明な改変だと思った。

キャップ『お前のしてきたことはお前の意思じゃない。仕方なかったんだ』
パッキー『わかってる。でもお前俺がやった…』
パッキーの立ち位置は、まさに戦争に駆り出され心に傷を負ったウィンター・ソルジャー(ベトナム帰還兵の会)そのもの。さらに言えば、アイアンマンもローディもその他の登場人物それぞれが数々の闘いによって肉体的にも精神的にもダメージを受けているし、本作の悪役ヘルムート・ジモも戦争被害者という意味ではウィンター・ソルジャーだ。命を懸けた闘いを描くヒーロー映画であるからこそ、避けて通れないテーマを真正面から描き切っている点が素晴らしかった。正直キャプテン・アメリカで一番良かった。
デパルマ

デパルマ