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ブラックパンサーのRのネタバレレビュー・内容・結末

ブラックパンサー(2018年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

映画館で1人で。

2018年のマーベル作品。

監督は「クリード チャンプを継ぐ男」のライアン・クーグラー。

話は「シビル・ウォー」での爆破テロで父親を失った王子ティ・チャラ(チャドウィック・ボーズマン「マーシャル 法廷を変えた男」)は祖国ワカンダに戻り、「挑戦の儀式」を受けることで、晴れて国王になったが、そこにワカンダ国王の座を狙う男、キルモンガー(マイケル・B・ジョーダン「クリード チャンプを継ぐ男」)が現れるというもの。

鑑賞日だった3/1は映画ファンにとっては嬉しい日であり、同時に頭を悩ませる日だ。

なぜなら話題作が一挙3作品も公開されるから!!

一つは巨匠クリント・イーストウッドの最新作「15時17分、パリ行き」。

もう一つは奇才ギレルモ・デル・トロ監督の最新作であり、「スリー・ビルボード」と共に今年のアカデミー作品賞最有力候補でもある「シェイプス・オブ・ウォーター」。

そして、最後が新鋭ライアン・クーグラーが監督する、マーベル・シネマティック・ユニバース=MCU最新作でもある、この「ブラック・パンサー」だいっ!!


この3作品の中では、本当は大好きなモンスターと大好きな監督ギレルモ・デル・トロ監督作の「シェイプス・オブ・ウォーター」をまず観ようかなと思っていたんだけど(イーストウッド作は劇場では見送り予定)、結果的には本作を選んでしまった。

なぜなら、あの「ロッキー」の続編として、監督経験が浅いにも関わらず大傑作として打ち出した、あの「クリード チャンプを継ぐ男」のライアン・クーグラーが監督したから!!

多分、度合い的には、勝手な思い込みかもしれないけど、この点に惹かれて決めた人も多いのではなかろうか?

そのくらい良かったってのは、皆さんもご存知の通り。

もちろん、マーベル最新作ということで、今後控える「インフィニティ・ウォー」に連なる作品という点でも魅力的なのは変わりないが。

クーグラー監督という点を抜きにして「ブラック・パンサー」というキャラクターに焦点を当てて見ると、初めてその姿を目にした「シビル・ウォー」では、もちろんヒーローの1人として憧れる人物像の1人として記憶に刻まれたが、その他大勢の個性豊かなヒーローの中ではイマイチパッとしないというのが、初見での印象だったが、果たして単独作となる今回の作品を観て、その印象は変わったのか?早速観て参りました!!

観た感想としては…。

ワカンダ、万歳!!

そして、ブラック・パンサーことティ・チャラこそ、これからの時代における新たなヒーロー像だ!!と印象を改めざるを得ない結果となった!!

前作「シビル・ウォー」の舞台から一転、今作では主な舞台をティ・チャラの祖国でもある「ワカンダ」となるわけなんだけど

文明、スッゲー!!

なんだろう、端的に言えば南米における民族性に近未来文明をプラスした都市って感じなんだけど、その双方のイメージを完全に融合した結果、観たことのない世界観を視覚化することに成功しているところにまず、驚く。

僕らが普段、ニュースなどで目にする広大な土地で狩猟生活を営んでいるような民族的な描写がありながら、一歩その世界に入ると地球に落下した地球上で最強の鉱石「ヴィヴラニウム」によってもたらされた恩恵により、飛躍的な進歩を遂げた都市部での生活を見ることができる。

だから、普通に牧歌的な雰囲気の最中、見たことのない通話機器でスマートに会話していたり、宇宙船のような(しかもステルス機能あり)の飛行機で空を飛ぶ描写や現実世界ではありえない規模のリニアモーターカーが走っていたりする。

うーん、センス・オブ・ワンダー!!

ただ、近未来に比重が置かれているのではなく、ワカンダ独特の民族性も遺憾無く発揮され、物語の根底に根差している点も恐ろしい。

なんだろう、ジャンルは全く異なるが小学生の頃、初めてアフリカという土地柄を感じた「ライオン・キング」を観た時の印象に近い。

普段、自分たちが暮らす世界の延長線上にある世界とは逸脱した、全く異なる世界観にものすごく引き込まれてしまった。

そして、そこは「クリード」のライアン・クーグラー!!そういった視覚的な新しさだけでない部分でも、しっかり魅せてくれます!!

まず、国王就任の儀式でもある「挑戦の儀式」。

滝沿いの決闘場を覆うような崖に点在するギャラリーに囲まれ、他の部族と一対一のガチバトルを繰り広げるわけなんだけど、これまんま試合やん!!

ティ・チャラが倒れそうになると王妃や妹で王女のシュリ(レティーシャ・ライト)が「頑張って!」「負けるな!」と鼓舞するなど映画における試合シーンのような描写に笑ってしまいそうになるも、しかしそこはボクシングとはまた異なる王位継承のための神聖な戦。相手側のジャバリ族のリーダー、いや「偉大なるゴリラ」こと笑、エムバク(ウィンストン・デューク)も明確な殺意を持ってティ・チャラに挑んでるわけで、描写があるとしては、よりスリリング。

武器でのパワフルな戦いから、打ち捨てての素手での戦いに巧みにテンポアップして繰り広げる勝負に手に汗握った。

見事エムバクに打ち勝ち、国王として「ブラック・パンサー」の力を継承したティ・チャラは、「エイジ・オブ・ウルトロン」でも登場し、ワカンダの資源である「ヴィヴラニウム」を盗んだ悪党ユリシーズ・クロウ(アンディ・サーキス「スターウォーズ/最後のジェダイ」)を追って、舞台は韓国へ。

カジノシーンでの潜伏シーンのスパイ映画のような巧みな潜入描写及び乱闘シーンも見事だったけど、メインのカーチェイスシーンもまた凄かった。

新コスチュームでの装いでのブラック・パンサーやいもうとシュリの遠隔ドライブシーンの凄さ(ちなみに運転するのは日本の高級車メーカー「レクサス」が販売する「lc500」)も良かったけど、なんといっても八面六臂の活躍をするのが国王ティ・チャラの親衛隊「ドーラ・ミラージュ」の隊長、オコエだろう。

ん?この綺麗に剃り上げた坊主姿で活躍する女優さん、誰?と思った方、はい注目!!

なんと、このオコエを演じるのが、あの!あの「ウォーキング・デッド」で日本刀を振り回してゾンビに立ち向かう勇敢な女性キャラにして、作品でも1、2を争う人気キャラ「ミショーン」を演じたダナイ・グリラ(「オール・アイズ・オン・ミー」なのだ!!

今作では日本刀から槍に武器こそ変えているし、ドレッドヘアからスキンヘッドに姿を変えてこそいるが、その眼光と鬼神のような勇猛果敢なバトルスタイルは、まさしくミショーン!!

今にも敵の顎を打ち砕いて、両腕ぶった切って連れ回さないか心配になるくらいだ笑っ!!

そんな圧倒的戦闘力を持ったサポートキャラと科学力を駆使した武具の数々を生み出す妹のバックアップを駆使して敵なしかと思われたティのチャラの前に立ちはだかるのが「クリード」こと「チャンプを継ぐ男」ことマイケル・B・ジョーダン演じるキルモンガー=死の商人」。

こちらはいつものマイケルの人の良さそうな雰囲気は息を潜め、完全なるヴィランとしながら、しかし「ある秘密」をその生い立ちに宿し、ティ・チャラとワカンダに反旗を翻す。

スマートに刈り上げたドレッドヘアから冷酷な殺人者としての印象も受けるが、死後の世界での父親との対話では、その果たせなかった想いに涙を流す人間性も持ち合わせていて、単純な悪役になっていない点もイイ。

そんなキルモンガーとティ・チャラの親友でもあったウカビ(ダニエル・カルーヤ)率いるボーダー族とのクライマックスとなる合戦シーンが、これまた面白い!!

どこぞの禁軍も見習え笑!!と言わんばかりに持ち味である部族のトレードマークのマントをシールドとして駆使しながら、ドーラ・ミラージュと大乱闘!!挙句には飼いならしたサイやジャバリ族も乱入し、激戦を繰り広げる描写は、もう観てるだけで熱いし、見応えがあった。


キルモンガーもゴールデンジャガーに装い新たにブラック・パンサーと戦いを繰り広げるわけなんだけど、クライマックスのサシバトルとしてカッコいいだけでなく、まさか父親のワカンダに対する想いが伏線となって、戦いが終焉するのは場所をあるロケーションで終える演出がまた、憎いじゃねーか!!

また、重要なのがそういったヒーロー映画における要素を最大限に演出しながら、現実世界における「難民問題」というテーマにも、「ブラック・パンサー」世界における答えを提示している点。

今までその技術を秘匿し、鎖国的世界を保ってきたワカンダに対し救済を求める貧困者である人々に手を差し伸べることを決意した国王ティ・チャラのラストの笑顔は、まさに「ヒーロー」だった。

本作、ここ日本ではまだ実感こそ湧かないが全米では熱狂の渦を巻き起こしているらしい。

今までも「ブレイド」や「スポーン」などいたが、「白人中心」でもあったヒーロー映画というジャンルにおいて「ブラック・パンサー」が現在大ヒットを記録している。この事実が大事なんだと思う。

だからこそ、多国籍社会をヴィヴラニウム製の爪で切り開くブラック・パンサーこそこれからの時代を象徴する新たなヒーローなんじゃないかなと思うし、そうなって欲しい。
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