あでゆ

ブラックパンサーのあでゆのレビュー・感想・評価

ブラックパンサー(2018年製作の映画)
3.0
アフリカの秘境にあるワカンダで産出される鉱石ヴィブラニウムは、全てを破壊してしまうほどのパワーを持つ。歴代の王は、悪用されないように鉱石の存在を極秘にしていた。若くして王になったティ・チャラは、謎の男エリック・キルモンガーがワカンダに潜入しようとしていることを知る。

いつものMARVEL映画のテンプレートに沿った明確な二項対立で進む本作だが、はっきり言って今作は見せ方が下手なように感じた。

最大の問題点はマーティン・フリーマンといった白人はせいぜいコメディリリーフ程度にしか扱われず、彼らから何かを学ぶということをしてない点だ。
行き過ぎたテクノロジーを持った王国が保守的にその技術を専有していたが(他の人間には過ぎた力であるため)、最終的に王国が世界の保護者として見守ってやろうという結論はかなり独善的で結局自分たちが最高で、他者は弱者であるという思想を崩そうとしない。

彼らが本当に真摯な態度をとるのであれば、王国が他者を助ける、守るといっただけではなくて、王国以外の人間から技術ではないものを何か学ぶ必要があったのではないかと思う。これがないから、ラストの「農業国が何を教えるの?」という台詞が皮肉にしか聞こえない。つまり、ワカンダは最後まで他者から何も学ぶ気がない。
要するに白人と黒人の立場が入れ替わっただけでやってることは何も変わらないんだなと。

コレ結局のところスタークやソーがやってたことと同じで、彼らがシリーズを通して気づいた、彼らは保護者としての側面だけじゃなくて学ぶ必要もあるという教訓が何一つ活かせてない。クイルも「力がなくて何が悪い」と言っていたけれど、まさしくそういうことなんだよな。
まあだからこそインフィニティウォーの予告でキャップを支持したりしてるのかなとも思ったりしたけれど。

今回のヴィラン、言ってること割と正当性あるのと、実際にやったことはババアの首絞めて花燃やしたことと1人殺して飛行機飛ばしたくらいなので、やられてるときも辛かったし結構後味悪かった。王妃が「よそ者に王になってほしくないから掟破ってやっつけて!」って言っちゃうんだけど、それも作品テーマの全否定だし、ただのエゴやんけ、と思ってしまう。
王が変わったことによって民が排斥されてるくらいの描写はあってよかったというかあるべきじゃなかったのかな。実際町が映るのって国王が女と散歩してる二回だけだし、SFビジュアル楽しみたい欲望的にももったいない。

割とアクションシーンがマーベルでは珍しいほどに見づらくて、裏カジノのワンカメラっぽいシーンとか何が起きてるのかいまいちわからなかったりしたので乗り切れなかった。
あとこれ『キングスマン2』とか『ドクター・ストレンジ』もそうなんだけど、行き過ぎた技術(魔法)ってなんでもありすぎて面白くも緊張感もない。SF映画っていうのは発展した技術でもできないことに面白さが広がっていくので、脊椎折れてもオッケーとかふーんっていう感想しか出てこなかった。

音楽とか序盤の描写は割と好みだっただけに非常にもったいない。
もう正直ここ最近のMARVELは全部全く同じ話で、「もともと大切にしてた思想を捨てて、以前は排していた考えを選んで成功する」っていう話しかないので、いい加減もうちょっとバリエーションも作って欲しいなどとも思ったりした。

あと家族で英語は喋らねえだろ…
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