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トゥーマスト ギターとカラシニコフの狭間でのzhiyangのレビュー・感想・評価

3.0
とにかく音楽が格好良い。終盤、伝統の音楽からそれをロック風に味付けした演奏に至るまでがハイライト。音楽映画として見ても楽しい。

ニジェールという正直あまり馴染みがない国について知るきっかけとしても良い映画だろう。トゥーマストの出自にはなんとカダフィ大佐が絡んでくる。サハラ砂漠の遊牧民は、アフリカに独立国が成立するにころには定住化・都市化が進んできたが、若年層は職がなかった。そうした若者をカダフィ大佐は兵士に仕立て上げたという。もっとも、レバノンでイスラエルと戦闘することになり「イスラエルと戦う理由がない」と抜けたらしいが、リビアで西洋の文化に触れ、わずかな稼ぎでギターとカラシニコフを買ったことからトゥーマストははじまった。サハラ砂漠を囲む国々には複雑な関係性があることすらこの映画を見るまでは知らなかった。フランス、カナダ、中国といった国がエネルギーのためウラン採掘をニジェールで進め、現地人は放射能汚染された水にさらされるというウンザリするような話も出てくる。

ニジェールに戻り遊牧生活を取り戻すための反政府運動をしながら、音楽に乗せて抵抗のメッセージをカセットテープに吹き込んでいた。音楽が正真正銘の武器になる事態というのも強烈な世界だ(ニジェールでは反政府運動を広めるとして音楽が禁止されていたという)。レベルミュージックというのは欧米ではある種の「ごっこ」と化している部分もあると冷めた思いでいたが、戦うために必要としている人間は本当に存在するのだと目が覚める思いだ。どうして音楽が必要になるのか、あらゆる意味でリアルな世界を見せつけられる。
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