ゆず塩

スポットライト 世紀のスクープのゆず塩のネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

あらすじ:新聞社に新しい上司が来て、神父の子供への性的虐待事件の取材を詳しく行うことになる話。

【感想】
事件を調査していくと、「どうやら単なる個人の事件として終わらせることが出来ないぞ」と分かっていく。加害者の数が増え、教会側が事件をもみ消そうとしてきたことが判明する……という物語。
だんだんと事実が分かってく様子なので、比較的淡々とした印象を受けた。
新聞社の中に教会側の人間がいて、報道的にももみ消していた……という展開もなく。伝記モノだから、そうしたとんでもない展開はないんだろうな。

社員たちの私生活も時折挟んで、事件性だけをピックアップしようとするのではなく……生活の隣に残酷な事実があるのを見せようとしているように思った。あと、カトリック教の身近さかな。

私は日本人で、まったくカトリック信者ではないのですが、信仰を身近に感じている人にとっては身の毛もよだつ事実ですよね。
自分の中だと、クリーンなイメージで好きだった芸能人が不倫などを平気でしていた、と知ったときのショックに近いんだよな。映画は、性的虐待だから比べるのはおかしいけど。
(2023年時点だとジャニーズ事務所の性的虐待を思い出すが)
でも、映画とかで「神父が主人公を助けている場面」とか、「教会で心を落ち着かせる、よりどころとする」とか、そういうのを見てきたので。なんか、すごく裏切られた気分にはなった。
そうした意味で、劇中にマイク(マーク・ラファロ)が激高する心情は凄くわかった。そりゃそうなるよ。

上手いなーと思ったことは、「9.11」のアメリカ同時多発テロ事件によって影響を受けた展開。それが事実なのかよくわからないけど。
テロによる恐怖に対して信仰という心のよりどころの重要さを理解しつつ、その汚点を告発する心情と言うか。
もしそこで発表していたら、国が混乱しそうだものな。信仰まで否定したら受け止められないでしょう。……それゆえに難しい。大きな反発が起きる可能性もあるし。
宗教を善悪で片付けようとしない姿勢も見せつつ、物語的に波も作っていて。秀逸。

単純に悪徳な神父を描くわけでもなく。
記者たちを完全なヒーローとして描くわけでもなく。
出来るだけ、普通の人たちの営みとしてスクープを追っている様子が誠実だな、と思う映画でした。
それゆえ、結構地味なんだけれど……。

相対的に、最近見た『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』とかを思い出した。
どちらも比較的、自己批判的な視点を入れようと努力しているんですよね。

【追記】
人間描写と演技がリアリティにあふれているように感じました。キャラクターと言うよりも、人間を映そうとしている。裏表があるとかそういう意味ではなく、生っぽい人々。
ゆず塩

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