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ゼロ・モティベーションのdiesixxのレビュー・感想・評価

ゼロ・モティベーション(2014年製作の映画)
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イスラエルの砂漠に配属された女性兵士たちの日常を描くオフビート社畜コメディー。
戦時の緊張感とは程遠いお茶汲みやコピーなど平成日本のOLばりのゼロモチベーションな仕事ばかりを押し付けられる管理部門のメンバー。親友同士のダフィとゾアールは、将校の目を盗んで昼寝したり、デスクトップPCでマインスイーパーしたりして退屈な日々をしのいでいる愛すべきダメコンビ。ダフィは都会転属という不純な動機で将校を目指し、ゾアールは一刻も早く処女を捨てるために奮闘する。
ブラックユーモアで、軍隊の集団主義、規律主義を笑いのめすテイストは『M★A★S★H』のようでもあり、アウトサイダーな女の子親友同士の青春を時におかしく、時にほろ苦く、時にエモーショナルに描く志向は『ゴースト・ワールド』のようでもある。本作でもバスが、作品の始まりと終わりを対比させる装置として使われている。
基本女性同士が嫌がらせ合戦しているのだが、どこか牧歌的、遊戯的な多幸感があり、ずっと笑ってた。お茶出しを押し付けられたゾアールが椅子のまま移動して、案の定お盆をガシャーン…それを同じく椅子のまま移動した後輩たちが見てるカットの何度言えないおかしみ。パソコンゲームを巡って大喧嘩した二人がガンタッカーで撃ち合いするバトルシーンの緊張と緩和が入り混じるスラップスティックな笑い。ユーモアにくるみながらも、男性優位の組織自体には、怒りのエネルギーが向かず、なんの影響も及ばさない救いのなさがしんどい。劇中の女性陣の中では最も職務に懸命なラマの送別パーティーのあまりにぞんざいな幕切れ。そして彼女の努力や真面目さに対して、観客の溜飲を下げてくれる結末はついぞ用意されないのだ。
それだけに恋人に捨てられ自殺した女の子の幽霊(!)に取り憑かれた(!)ロシア系のルームメイト、イレーナの意外な活躍は胸に残る。
登場人物の一人一人が見終わった後も実在しているような気がして、たまに会いたくなる系映画。
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