カズミ

スーサイド・スクワッドのカズミのレビュー・感想・評価

スーサイド・スクワッド(2016年製作の映画)
4.2
『マンオブスチール』が好きで、ヴィランも好き。けれど、ジャケ写から勝手に荒唐無稽でポップなイメージを抱いてしまい、長らくちゃんと目を通していなかった。友人にお勧めされてから腰を据えて観た後、印象が大きく変わった覚えがある。

前提として、『マンオブスチール』後『ジャスティスリーグ』前の世界線だということを念頭に入れて観ると面白い。
人間離れした脅威的な力を持つメタヒューマンに大都市を破壊されかけ、政府が恐れと防衛本能の狭間で冷静さを欠いていることが、この自殺部隊結成の背景にある。
死刑一歩手前の手に負えない犯罪者を集め、対メタヒューマン用の部隊をつくる。そこで彼らが死のうが生きようが、そんなことは関係ない。駒として従わせ、国のために使役する、なんて要人連中の考えの方が最高に狂っている。

それぞれのヴィランを象徴するアクションに満ち溢れた映画だが、それだけではないヒューマン要素もちゃんと描かれている。
ディアブロの過去話でしんみりする流れかと思いきや、「罪を犯しているのは承知の上でしょ。背負いな」と吐き捨てるハーレイの言葉には、ハッとさせられた。
患者であったはずのジョーカーに魅せられ、悪に落ちた元・精神科医からの発言であることが、なんだか重く感じられる。

普段は頭のネジが外れたように振る舞う彼女だが、彼と出会う前は、世間一般の倫理観の中で生きる普通の女性だったはずだ。自ら一線を越えることを選んだ彼女は、自分が社会的に許されない道を歩んでいることを理解している。おそらくは、許されようとも思っていない。
昔からヴィランの境遇に肩入れしがちで、「罪を犯す前に、どこかで助けが入らなかったんだろうか……」と、凹みがちだった私にとっては青天の霹靂だった。そうか。彼らはヴィランにならざるを得なかったわけじゃない。自ら選んだことに変わりはないのか、と。

彼女が惚れたジョーカーも、出番は少ないものの、強烈な印象を残している。薬剤のタンクに堕ちていくハーレイを見捨てるかと思いきや、後ろ髪引かれて後を追う。情婦扱いならまだしも、一瞬、人間らしい心が垣間見えるのは、今までにないジョーカーだなあ、と。
『ハーレイ・クインの華麗なる逆襲』では破局した設定になっているが、ザック版の『ジャスティスリーグ』では、また彼の本心が垣間見えるシーンも挿入されている。
でも、『マンオブスチール』の世界線だと考えると、彼がバットマンの相棒ロビンを殺害しているんだよなあ……作中深く明言されていないので、欲を言えばその辺りもしっかり見てみたかった。

本作はDC原作といえど、スーパーマンやアクアマン、フラッシュなどのメタヒューマンを扱う世界線を同じくしているため、昨今のバットマンなどのリアルさを追求している映画とは一線を画している。どちらかというと、MCUの描き方に近いかもしれない。
それゆえ、堅苦しくなく、深い意味など考えずにサクサク観れる爽快感があると思う。あくまでヒーロー、ではなくヴィラン映画。適度にシリアスなアメコミ作品を見たいときにはおすすめです。
カズミ

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