ゆ

心が叫びたがってるんだ。のゆのレビュー・感想・評価

心が叫びたがってるんだ。(2015年製作の映画)
3.1
17.8.11

言霊について考えさせられる。
発した言葉に呪い、呪われる感覚。劇中に度々出てくる台詞「言わなければ伝わらない」。我々は言葉に呪われる運命にあり、それが言葉を使う代償である。

その事に気付き、全てを言葉の所為にして自ら言葉を封じ込めた順。幼い少女にとって、運命に逆らう自己防衛であり、悪いのは私ではなく言葉だと、どこかで自らの非を認めたくない必死の抵抗のように思えた。

少女はその幼さを捨て、拓実の力を借りて再び言葉を取り戻す。私の中の玉子ー幼い自分との脱却と贖罪。

映画の結末に賛否両論あるようだが、悲しいようでいて切ない。必死に口にした言葉でも実を結ぶとは限らないようだ。全てを受け入れたばかりの少女に現実の残酷さが重くのしかかる。しかしそこで再び殻に閉じこもることをせず拓実の手を握る姿に、風に巻き上げられ宙を舞う玉子の帽子に、胸を裂かれるような思いがした。

劇中を通し、誰よりも成長したのは他でもない順であるが、他の3人にとってこの思い出は色鮮やかな青春の1ページにしか過ぎないのであろう。
ゆ