キミシマユウキ

心が叫びたがってるんだ。のキミシマユウキのレビュー・感想・評価

心が叫びたがってるんだ。(2015年製作の映画)
3.9
幼い頃自分のお喋りが原因両親が離婚してしまい言葉を閉ざしてしまった少女が高校のイベントでミュージカルをやることになるが…

実写ドラマ化もされ、本日放映される
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(略して"あの花")
のメインスタッフが再集結して作られた青春ミュージカルアニメーション。
あの花のアニメにそこそこ感動したので劇場の最高音響と大スクリーンで鑑賞。

正直"あの花"よりも自分は好きだった!!
開始早々視聴者たちをグイグイ抉ってくるような展開で見事にこの映画の世界に入り込ませ、登場人物達の繊細な気持ちに共感させるような作りをしてるのはやはりこのスタッフならではの技だろうか。誰もが憧れる青春高校ドラマとしての甘酸っぱさも見ていて恥ずかしい程の完成度であった。

主要な人物は皆なにかしらの
"言葉で傷ついた人"
でありこの作品のテーマにもなっている"言葉の力"についても深く考えさせられる。最近は言葉を扱ったフィクション作品によく触れていたのでとても興味深いものになっていた。
またここではもう一つのテーマとして
"音楽で感情を表現する"
ことも取り扱われており、名作クラシックの音に主人公の失った言葉を乗せられた曲達はとても感動できた。
自分も齧っている程度だが音楽の力を信じているので、
「喋りでは恥ずかしくて口に出来ないようなことを歌に乗せると表現することが出来る」
という考えにも同感でき、よりこの作品を好きになれた。

登場人物達も魅力が溢れる。
坂上拓実
最近アニメで見る無気力に見えて実はやれば出来る系主人公だったが彼の奏でるピアノの旋律には心が洗われた。
喋ることが出来なくなった少女成瀬順
もう可愛らしくて堪らない。黙っているのに心はお喋りという新たなヒロイン設定はオタク達の心を叫ばせたがること間違いなしだろう。
チアリーダーの仁藤菜月
立ち位置的には少し意地悪にも見えたが個人的にはとてもタイプ。この子の話をもう少し掘り下げてもいいかなと思った。
野球部の元エース田崎大樹
こういう野球部いるいるwwww
となるが一本筋の通った憎めない奴。彼のエピソードもかなり心を抉ってきた。
声優陣では先生の声がクレヨンしんちゃんの野原ひろしこと藤原啓治さんが出ていただけで満足。
チョイ役でラブライブのかよちんの声久保ユリカもいたらしいが気付かなかった(笑)

素敵な音楽と泣けるシナリオでかなりの高得点を期待出来たが、自分の中でのピークと作品のクライマックスが重ならなかったのが非常に残念だった。
団結してミュージカルに向けての準備をしていたのにその劇を全て見せてくれないのはどうしたものか。最後のメインの曲も二つの名曲を重ねる斬新なアイディアは素晴らしいが歌詞がわからないと二つ重なってて聞き取りずらいという部分もあったので初見では厳しいものがあった。クラシックの知識もあればより良かっただろう。
つまりサントラを聞き込んでからもう一度見ればかなり点数は上がったと思う。
それでも穢れた大人の心が洗われるような青春アニメとしてはとてもクオリティの高い作品になっていることは間違いない。
ラストのハッピーエンド×バッドエンドという劇と現実が交差するような展開も秀逸だ。

〜オマケ〜
初回劇場特典で貰えるミュージカルのパンフレットが結構しっかりしていて満足!
自分と友達は最初何かの広告かと思って速攻で捨てかけたので皆さんはお気を付け下さい。
今日の実写ドラマも見たことない人もこれを期に是非!!

あの花好き、青春アニメ好き、クラシック好き、そして言葉で傷ついた心がある人にはオススメの作品。