このレビューはネタバレを含みます
『異人たち』を観る前に、アンドリュー・ヘイ監督の作品に触れておきたくて鑑賞。
刹那的なのにすごく濃密な二日間の記録。
性格も価値観もまるで違い、序盤の会話も噛み合っておらず、あまりいい雰囲気には感じられない二人なのに、会話を重ねて大なり小なりお互いをぶつけ合いながら相手を嚥下していく様子は、誠実で健気だ。
周りに人がいても自分をさらけ出せず孤独感を拭えないけれど、ただ分かり合える恋人と慎ましく生きられればそれでいいラッセル。
明け透けにできるがそこに周囲の思いやりや理解が伴うわけではなく、かと言ってただ同類のコミュニティに閉じ籠ってはいたくないグレン。
そもそも二人の思う幸福の形が違う。
でも、出会いの翌朝と出立時のホームとで、ラッセルとグレンのセリフが逆になっているのが、二人の心の寄り添い合いを感じて、だからこそ切ない。
別離前提の出会いだったし、最後まで他人から心無い言葉を投げられるし、ままならない人生だけれど、こういう美しい瞬間を重ねながら生きていけたらいいなと、主役二人には怒られそうな感想を抱いた。