COZY922

ピエロがお前を嘲笑うのCOZY922のレビュー・感想・評価

ピエロがお前を嘲笑う(2014年製作の映画)
3.7
サイバー社会に現実社会以上の価値やリアリティを見い出し暴走する天才ハッカーグループのクライムサスペンス。

目を引くのはサイバー空間の映像表現。とても上手いしスタイリッシュ。矢継ぎ早に切り替わる映像とそれに調和したテクノ・サウンドは無限空間の浮遊感に通じ、ピエロやXのアバターは相手が何者であるかがわからない不気味さと疑心暗鬼を煽るモチーフとしてハマる。地下鉄も” アンダーグラウンド ” な世界のコミュニティとしてふさわしい選択だと思う。映像体験としてはミュージックビデオのそれに近いものを感じた。

一方でかなりアナログでエモーショナルな描写もある。そもそも話が主人公ベンヤミンの回想・告白形式だし、彼らが犯すサイバー犯罪もITの世界で終始するものだけでなく、人間の心理的な隙や行動パターンにつけ込んだ原始的な詐欺の手口との組み合わせによって成り立っている。現実に私達が目にするもので考えても、フィッシングメールなどは仕掛けはITだが、釣られるか釣られないかはユーザー側の知識レベルや理解度、用心深さなどに左右される。本作は人間心理の隙を突く手口や感情のぶれと、デジタル世界でのスキルや手段によるものとのバランスも良かった。

と、ここまで褒めたけど、ツッコミどころも満載だ。特に、ユーロポールへの侵入‼︎ あれは無い、無い、無いわ〜‼︎‼︎‼︎ ( ̄▽ ̄)。トップクラスのセキュリティが必要な機関の施設は敷地の入口、建物のエントランスの両方に複数の警備員配備と部外者の立ち入り時の手荷物検査、監視カメラによる監視センターからの監視、更には建物だけでなくフロアごと部屋ごとのセキュリティレベルに応じたIDカードによる制御や指紋認証などがあって、アナログ/デジタル両方で何重ものセキュリティガードを施しているもの。いや〜、いくら完璧が無いっていっても、あんなにやすやすとは入れないですから〜(^^;

主人公も現実社会での負け犬的な位置づけになってるけど、あれだけのスキルがあればいくらでも道はあると思うし、、。

まぁ、でもおもしろかったです。あまり見破ろう見破ろうと思わず、感性に身を委ねて観るほうが楽しめると思います。
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