はぐれ

ナショナル・ギャラリー 英国の至宝のはぐれのレビュー・感想・評価

3.7
初めてのフレデリック・ワイズマン作品。絵画の修復作業員が「作業は全て絵画の上に塗られたワニスの上で行われるのでいつでも作業前の原画の状態に戻すことが出来る」と語っているシーンが刺さった。そうか。作業員が目指していることはまさしくフレデリック・ワイズマンと一緒だ。本作は音楽も字幕もナレーションも最近流行りのアニメーションのインサートも使用しない素材本来の味を信じた堅調な演出。この映像は時系列を入れ替えて編集することで十人十色の作品が出来上がるようにしてある。そう監督がやりたいこともまた名画の修復作業のようなものなのかも知れない。過剰な味付けは行わずに陰影を強調したり色合いを濃くしたりわずかな手を加えることで名画が見事に蘇る。その再現性に監督は共鳴したのではないだろうか。

「何日もかけて修復した絵画がたった15分の洗浄で元の状態に戻ってしまう。けどそれでいいんだ」。深い台詞だよね。
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