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不正義の果てのchiyoのレビュー・感想・評価

不正義の果て(2013年製作の映画)
4.0
2015/3/5
本来は「SHOAH」の一部となるはずだったけれど、ランズマン監督が別枠にしたのも納得。それくらい、最後のユダヤ人長老ムルメルシュタインは個性が強く、他のユダヤ人とはまるで毛色が違う。そして、彼を通して描かれていく、アイヒマンの人間性と模範収容所の実態。正直なところ、ムルメルシュタインは善人ではないと思う。でも、悪人でもない。もしユダヤ人長老の彼がただの善人であったのなら、きっとすぐに殺害されていたはず。アイヒマンを始めとするナチスと渡り合うには、図太いまでの精神と狡猾さが必要。だからこそ、ユダヤ人長老の中で唯一、彼だけが生き残れた。個人的に、アイヒマンを凡庸と評した、ハンナ・アーレントへの痛烈な批判が印象的。また、プロパガンダに利用された収容所の映画に、思わず「縞模様のパジャマの少年」を思い出した。稀に口を挟むランズマン監督の一言が、何気に重要ポイント。
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