YokoGoto

日本のいちばん長い日のYokoGotoのレビュー・感想・評価

日本のいちばん長い日(2015年製作の映画)
4.7
原田眞人監督の最新作で、『日本のいちばん長い日』という戦争映画ということで、(終戦の日前の)公開初日に劇場で鑑賞。原作は半藤一利作のノンフィクション『日本のいちばん長い日 決定版』に、同著者の『聖断』、『一死、大罪を謝す』、『昭和天皇実録』を取り入れた、原田眞人監督脚本作品。
1967年の作品『日本のいちばん長い日』は未見なのでなんともいえないが、原田監督の独自のテイストが大きいのではないかと思うので、別物と考えたほうが良いのではないか?と思う。


134分。
映画冒頭のシーンから、『やはり原田眞人監督作品ならではのクオリティだな』と思った。最初から最後まで、丁寧な迫力のある画づくりは、やはり日本人監督の中でも、世界に誇れる実力派監督だと言わざるをえない。


とくに、俳優の活かし方がすばらしかった。

最も良かったのが、昭和天皇役の本木雅弘さん。監督の描く昭和天皇像を的確に、そしてリアリティ溢れる人物像に演じさせたのは、監督の力量以外のなにものでもないと思う。
その他、役所広司さん、堤真一さん、山崎努さんなど、主役級の実力派俳優を主要なポジションに配置することで、その役柄の重厚感と役割をきちんと演じこなせていることろはぐうの音も出ない。
東條英機役の役者さんなんて、そのまま本人が生き帰ったのではないかと思うくらいに、雰囲気がぴったりで恐れおののいた。


さらにいえば、メインキャスト以外にも、その役作りの細やかさは秀逸である。

軍人(若手将校)役の俳優さん、全員が素晴らしかった。
出来る限り作り物に見せない、演じさせない、自然でありながらも、時代を越えて再現する日本兵の息遣いは、リアルそのもので素晴らしい。思わず、時代を逆戻りさせられたような絶妙な感情移入をさせられた。

よって、134分集中を切らすこと無く、一気に画面に引き込まれてしまった。

原田眞人監督がインタビューで、『できるだけニュートラルな軍人の姿を描きたかった』とおっしゃっていた。まさに、そのとおりだ。

よく世の中は、右とか左とかラベルを貼りたがる。
正直、そんなラベリングはどうでもよく、事実として残されている歴史をそのままうけとめ、私たちの未来を考える必要だけがあるのに、いつも違う論争になってしまう。なぜ、そういうラベリングだけがひとり歩きするのか、極めて残念でならない。


私たちが見つめるのは未来。
そのために、過去をそのまま受け止め、その時代の価値観を『理解』する。
そして、価値観の変わった現代で、同じ過ちを繰り返さないために未来を考える。
ただ、それだけでいいのではないか?と思う。

誰もが「戦争」は嫌に決っているし、起こしてはならないことは重々わかっている。本作で描かれているのは、なにもよりも、戦争を始めるのも辛いが、戦争を終わらせる事のほうが、その何倍も難しく辛い決断に見舞われる事だ。それだけは、事実として残されているのだから、学ばないわけにはいかないのである。

これらのことから、非常に秀逸な作品だと思うので、ぜひ劇場で観てもらいたいと思う。
そして、原田眞人監督には、これからも、もっともっと、こういう映画をとってもらいたい。
YokoGoto

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