れじみ

アメリカン・ドリーマー 理想の代償のれじみのレビュー・感想・評価

3.5
原題を直訳すれば、″もっとも暴力的な年”と言ったところか。
再三にわたってラジオから流れる不穏なニュースが原題を端的に表してる。

NYの街並みと音楽に乗せ、オスカー・アイザック演じる主人公が走る姿を捉える。
文句の付けようがない完璧なオープニングだった。
これはとんでもない傑作なのではと期待したが、残念ながらオープニング以上に素晴らしいシーンはほぼ存在しなかった。

作品が悪いとは思わない。
単純にハマるかハマらないかの違いであって、作品がチープなわけではない。
事実設定から世界観から徹底的に作り込んであるのが伝わるし、描かれる人間ドラマは重厚で、
中盤から終盤にかけて凄味を増していくサスペンスフルな展開からは目が離せない。

ただ、ひたすら理想を追い求める主人公に対して周囲や身内までもが足枷になっていく構造は観ていて興味深いが、
如何せん1981年NYのオイル業界で理想主義を貫くことがどれだけのハードルだったのか、当時を生きてない自分にはイマイチ伝わりにくかった。

ラスト、主人公の理想を打ち砕くかのように放たれた銃弾によって漏れたオイルが何を意味するのか、この辺りを追求していくと非常に見応えのある作品になっていきそう。

当時の世相を表すかのような黄色がかった冷たい映像が印象的だった。
それとオープニングに匹敵するシーンとして、トンネル内でのカーチェイスは挙げておきたい。
あれも実にいいシーンだった。

オスカー・アイザックは今ノリにノってる役者だね。
スター・ウォーズで重要キャラを演じたり、アカデミー賞作品に絡んだり。
もうすぐ公開されるX-MENの新作では史上最強のミュータントを演じてるから、そちらも楽しみ。
真っ直ぐに相手を見つめる目、あれがあるシーンと連動してて、凄く良い。
ジェシカ・チャステインはセクシャルな魅力と女性ならではの狡猾さを漂わせて、相変わらずの存在感である。
どんな役やらしてもこの人は上手い。
他の役者さんも作品とミスマッチな人は誰もいなくて、見事な演技だった。
れじみ

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