片腕マシンボーイ

らの片腕マシンボーイのレビュー・感想・評価

(2014年製作の映画)
3.2
園子温監督の元で映画製作を学び、今や西村喜廣監督の右腕とも言える「忍者虎影」の目無しこと水井真希の監督デビュー作
自身の経験を元に性犯罪被害者の苦しみを描く

バイトの帰り、夜道をひとり歩くまゆかを突如恐怖が襲う
背後から抱えあげられ手足を縛られ目を口を塞がれる
一晩連れまわされた後に解放されるまゆか
それ以来まゆかの心は深い森の中に閉ざされていた
そしてまゆかのもとに届く厚い書類の束が彼女を一層深い森へと誘うのだった…

西村監督いる場所まるで影のごとく必ず現れる水井さんのデビュー作ということでずっと観たかったのだがなかなかに重いテーマ故に躊躇しているうちに劇場鑑賞の機会を逃しましてん…

もうな観てる間中ずっと胸の奥に鉛の塊でも抱えてる様な気持ちでしたよ
しんどい
普段見慣れたレイプリベンジ物はそのしんどいシーンがあるからこそ後半の逆襲シーンでフラストレーションが解き放たれ開放感、爽快感が得られるが
リアルな性犯罪に向き合った本作では理不尽に体を心を痛めつける暴力によって心の底に沈殿した澱は決して解き放たれることなく重みを増していく

そう、本作は性犯罪版の「野火」
性犯罪はダメですよ、って訴える作品ではなく
性犯罪被害者の苦しみを疑似体験することにより被害者当人の数百分の1、数千分の1でも苦しみを知ることにより
性犯罪について個々が考えることを促す作品

なぜ被害者であるはずの彼女が罪悪感を抱え生きていかねばならないのか?
本来なら心の隅に追いやり忘れてしまいたい記憶を我々の前に曝け出してまでも訴え力強い作品を作り上げた水井監督の映像作家魂に感服
今後の作家活動に期待が広がりました

ここからは余談、
本作では水井監督のサポートという形で作品に関わった西村監督ですがね
被害者の近所のおじさん役で出演もしてましてね…
もう違和感しか感じない!
あの容貌に普段通りのつなぎ姿で近所のおじさん役…
違和感しかない!
でもどんより重いシーンのあとでちょっぴり心躍ってしまったよ

あと、フクロウ役の屋敷紘子姉さんの立ち姿な!
これだけカッコ良くて様になる立ち姿、他に女優でもなかなかいないよなぁ
かっこぇえ!

って井口監督西村監督近辺の作品になると作品の内容や本質と関係ない部分でいろいろ気になっちゃうクセが年々酷くなっていく…