川瀨直美監督による、ドリアン助川の小説の映画化。
静かに、ひたひたと心に沁みわたる映画でした。
安定の永瀬正敏と、盤石の樹木希林。
大げさな音楽・演出抜きで、ただ演技とコトバで心を震わせる。
みんな差別がいけないとわかってはいる。
ただ、なんとなく避けてしまう。
それが積み重なって、見えない壁が作られてしまう。
そうやって奪われてきた、人生の時間と豊かさの大きさを思う。
「私達はこの世を見るために、聞くために、生まれてきた。
この世は、ただそれだけを望んでいた。
……だとすれば、何かになれなくても、私達には生きる意味があるのよ」
樹木希林が演じる「徳江」のセリフから。
これは、原作読まなきゃいけないやつだ。
そして対をなすような、河瀨監督の言葉。
「わたしが観なければ、夜空に現れた満月も存在しないのと同じだ。
ただそこに在るだけではない。わたしがいるからそれが存在する。
お互いがお互いをそう想いあい慈しみあう世界への扉がここにある」
観終わってから、いろいろと込み上げてくる。
今まで観た邦画とは違う味わい。
あと、秦基博の歌声って、映画の主題歌向きだなぁ、とつくづく思った。
いろんな感情を投影できる声というか。