樹木希林さん最期の主演作は終始、死さえ春の香りに包まれている様な映画だった。
ハンセン病の元患者であった彼女へ対する心無い噂が蔓延し始め、瞬く間に居場所が追いやられていく筋は予想こそしていなかったものの…
しかし、あぁ言った差別は保身から発生するものだからこそ恐ろしい。
皆が皆面白半分に、被差別者を論っているつもりは無いのだ。
そごう美術館にて開催されていた「遊びをせんとや生まれけむ展」直後の鑑賞だったからか、一層希林さんの魂を感じられた気がする。
後遺症の残る手指と同様、台詞の間や瞳の逸らし方一つを取っても到底芝居をしているとは思えず、こちらも構えずに観ていられた。
哀しく切ないながら、とても心地の良いひと時だった。
