やっぱりカルカン

バケモノの子のやっぱりカルカンのネタバレレビュー・内容・結末

バケモノの子(2015年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

2回目か3回目の視聴です。
不器用だけどまっすぐな熊徹が可愛らしい。自分を誇れない一面があるものの九太と自分が重なる部分もあり、せめて九太に対しては師匠らしく、少しでも親らしくあろうとする一生懸命さにも胸を打たれます。

ベストキッドみたいで最初はワクワクするんですが、終盤からラストにかけて気になる点がいっぱいあって最後はとてもモヤモヤします。私は心が汚れているので以下の内容がもしお気に触りましたら申し訳ないです。

・実の父
久しぶりに会った実の父に対して蓮(九太)が一方的に怒るシーン。実の父が大人しそうな男性で蓮とは対照的なのですが、シャキッとした青年に成長した蓮から見ると「勝手に決めつけ」られたのもありますが、なんとなく大人で落ち着いた物言いにイラッとしたのかもしれませんね。結局最後は2人で暮らしますが、お父さんの気持ちを考えるととにかく可哀想なシーンでした。

・楓の「みんな同じ」
楓の生活(人生)も辛いのかもしれない。大変なのかもしれない。でも、九太の生活(人生)と比べたら同じ天秤では量れないのでは。実際に九太はポジティブに受け取ったし、人それぞれ受け取り方はあると思いますが、私は「みんなそうだよ」「誰でも同じ」という言葉は傷付きますし、嫌いです。

・一郎彦
最低で取り返しのつかない事をした。見ていて本当に嫌な気分になりました。

・鯨
クジラになった一郎彦は、楓と九太に特に何か危害を加えてくる訳ではなかった。しつこく追いかけ回してきたが何をしたかったのかよく分からなかった。一般の人達にあんなに危害を加えて、九太が憎くて殺したいならすぐに攻撃すればよかったのに。

・修行
九太も一郎彦も格闘や剣の修行をしていたはずですが、人の姿で戦ったのは少しだけ。最終決戦時はその修行の成果を何も活かさずに終わります。2人が剣を交え戦って、今までの修行の成果を存分に見せるのかと思いきや一瞬で(一郎彦はほぼ鯨のまま)決着がついたのでガッカリしました。

・会話
胸の中の剣となった熊徹との会話はちょっと白けました。話すのはもっと一言か二言でよくて、会話したというか声が聞こえたぐらいに留めておいて欲しかった。「会話」をしたかどうかは視聴者の判断に委ねるぐらいでよかったのに結構しっかりやり取りしたのでゲスい話、今後九太が女性と性行為するときも一人で自慰する時もトイレで大便してる時も、いつも胸の中の熊徹が…と思うと複雑な気持ちになった。(汚い心の持ち主でごめんなさい)

・しおり
楓にもらった赤い栞の紐。腕につけてもらったそれを一郎彦に譲渡する九太。私は自分があげたものを、理由はどうあれ他人にあげてしまう恋人の感覚は理解できません。例えば首飾りとかズボンのベルトにしてた布の端を切ったものを巻くとか、何かしら九太が身に付けていた別の紐を結んであげるような別のやり方だったらよかったのに、楓にもらった紐をそのまま人にあげるなんてちょっと嫌な感じがしました。
細かい話になりますが楓と九太は体格差があるのに、楓の細い腕に付けてた紐を切って結んだら九太の腕にぴったりなんて事有り得ないと思いました。

・一郎彦
目覚めた後、試合以降の記憶を失ったのかな?家族もあの時の記憶はないのだろうか。一郎彦が人間の子であるということは変わらないのに、周りの人達はあの時あの場所で何があったのかを覚えているのに、これから元の家族とあそこで幸せに暮らせるのだろうか。

・人間界で生きる
次郎丸はずっと友達だと言ってくれたのに、世話になった百秋坊、多々良とも別れ人間界で生きていく九太。たくさんいた弟子たちはどうするのか…熊徹はずっと九太の胸にいるから寂しくないにしても、ちょっと無慈悲な決別に感じました。
九太も長老になる素質はあると思うのに、ならなくても熊徹の弟子として学んだものがたくさんあるのに、それも活かさず、これから人間界で生きていく上で胸の中の剣(熊徹)が何の役に立つというのか。熊徹は九太を助けることができればそれだけでよかったのだと思うが、きっぱり渋天街と決別するのではなく時々顔を見せる様子くらい、あってもよかったのではないかと思いました。(テレビだったのでカットされてたらすみません)

・まとめ
最初はベストキッドみたいで面白い。心は揺さぶられたが、最後は嫌な終わり方でスッキリしない。私には合わなかった