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バケモノの子のKANIOのレビュー・感想・評価

バケモノの子(2015年製作の映画)
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前作で「母親」を描いた細田守が、本作では「父親」と「師匠」を通して家族愛を描き出したり出さなかったり…。

そもそもとして「心の闇はバケモノに無い」という設定に伴ってないバケモノたちの描かれ方に納得がいかなくて、設定として納得しようにもバケモノ達のキャラクター造形的に明らかに人間より闇抱えてそうなキャラクターが「人間の心には闇があるからなぁ」なんて言っても「じゃあバケモノと人間の間にある"感情"って何が違うんだ」ってSF的に不毛な問いかけになってしまう。

作中のキャラクターが「生まれつき持ってしまったもの(心の闇)」が原因となり、それに苦悩し具現化した時に最終的に主人公がとった行動が"解決策"とはいえないパワープレイでそれも全然納得できないし、そもそもとして『白鯨』を引用したのに解決策がまったくそれを活かせていないのも致命的。

相変わらず心情的なテーマを語らせたら気持ちが悪いほどにキチガイ的ポジティブさが発揮されて、台詞回しもダサい。
図書館女子高生のキャラクターがあまりにも安直だったり、上記のように「心の闇」周りの設定が乱雑すぎて、ロジックとして主人公にも敵にも感情移入し難い。

まさに"1人で強くなること"を「罪」とした事に関しては、「おい細田守、またかよ」って感じだったのだが、物語後半からは映像表現的な意味でその"イズム"が少しずつ狂い始める。

相変わらずの所は相変わらずだが、今回は戦闘描写が多くある作品なだけあって、情緒的な演出以上に外連味溢れる映像のセンスとヌルヌル動く戦闘アニメーションへの拘りが重点的に目立っている。
その為、良い言い方をすれば「画的には少年漫画的に燃える作品に仕上がっている」。

血の繋がりが無ければ種族も違う。しかし、そんなバケモノに育てられた弟子が劇中の最後に見た"師匠"の姿とは。脚本は大いに問題あれど、「細けえこたぁいいんだよ!」な視点で見れば、"燃え泣き"間違いなし。
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