うらぬす

怒りのうらぬすのレビュー・感想・評価

怒り(2016年製作の映画)
4.9
メインキャストがみなキャリアにおける最良の演技を見せてくれたと言っても大袈裟じゃない。特に宮崎あおいの泣き崩れる姿にはなにかに憑りつかれているかのような凄まじいものを感じたし、「愛子だから?」と尋ねるときの無表情さもその裏に色々なものが隠れていて言葉を失う。
予告編で広瀬すずが泣き叫んで言う台詞、「いくら泣いたって怒ったって、誰も分かってくれないんでしょ」。自分ではどうしようもないという状況、自らの無力さと環境を呪ってただ諦めるほかないやり切れなさを、作中では多くの登場人物が色々な場面で嘆く。広瀬すずのように泣き叫ぶだけじゃなく、静かに滾る憤りを声音に潜ませたり、物悲しく笑いながら零したりする。でもそこにはやっぱり「怒り」が共通して介在していて、それこそがきっとあらゆる意味を成しうるタイトルのひとつの含意。
犯人が現場に残した「怒」の文字の意味も、殺人を犯した動機も、結局真実は明かされないけど、それは観た人が各々自分に問い掛けるべきものなのかもしれない。
人を信じるとはどういうことかという、この映画を貫く大きな一本のテーマと、こういう「怒り」とが重層的に絡み合うことで、こんなにも心に響く映画が生まれた。