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怒りのharunomaのレビュー・感想・評価

怒り(2016年製作の映画)
4.8
響きと怒りの物語(エルセサー)

広瀬すずは『海街diary』も『四月は君の嘘』『三度目の殺人』も好きだ。群像劇ながら、今作が一番の代表作となっただろう。彼女の叫びが沖縄の波の音とともに坂本龍一のピアノの音を越えていく。坂本は2000年代後半からまるっきりダメになった(坂本の映画音楽は『御法度』前後が、というか『御法度』が最高傑作であり、それ以降はいい映画に出会ってすらいないと想う)が、今作の音楽のあり方は、よかった、20世紀の彼へ畏敬の念とともに映画の側が音楽へ、レクイエムを送った形だ。それを李相日監督がやる。フィルム作品は四つの要素―即ち映像、言葉、サウンド、音楽から成立しているというものです(マノエル・ド・オリヴェイラ)。
はたして広瀬すずの叫びは、言葉だったか、サウンドだったか。そして音楽は、映像は。怒りとは、声になるのだろうか。思ってもみないことだ。なんの才能もない撮影監督の笠松則通ですら、デジタルシネマ(16年 Arri Alexaの選択はやはり正しい)でここまでやる(もちろん照明の中村裕樹の光、そのアンサンブルと闘いもある)。なによりも俳優を信じること、劇映画を撮るということ、日本映画にはまだ、これだけの芝居をする映画俳優がいる。作り手たちのその実直なまでの本気度に胸をうたれる。映画館で観れなかったことは悔やまれるが、物語映画はやはり素晴らしい、Bigger Than Life
俳優のライフと身体、劇を生きること
Written on the Wind
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