ノラネコの呑んで観るシネマ

シン・ゴジラのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)
4.9
色んな意味で映画史に残る大怪作。
「ファイナル・ウォーズ」で北村龍平が完膚無きまでにぶっ壊し、更地になったゴジラワールドを驚きのリビルド。
「もしも現代日本に怪獣が現れたら?」というリアリティの追求は、既に平成ガメラがやったが、これはその路線の究極系。
本作では個人の葛藤や苦悩は全てゴジラという大災厄に巻き込まれ、ほとんど何も描かれない。
普通の映画的な意味でのドラマは、限りなくゼロに近い。
ここにあるのは、怪獣出現というシチュエーションで、日本という国家の中枢で何が起こるのかの徹底的なシミュレーションだ。
自衛隊+米軍とのバトルシークエンスの作り込みは圧巻で、観客が期待するものをしっかり見せ、これが紛れも無い「ゴジラ」映画なのだと主張しながら、過去に作られた如何なる怪獣映画にも似ていない。
いや、あえて言えば、視点の異なる「クローバー・フィールド」か。
登場人物たちが繰り返す「想定外」のセリフを聞くまでもなく、今回のゴジラが3.11にインスパイアされているのは明らかで、現在の荒ぶる神の意味づけもクリア。
決着のつけ方も含めて、見事だ。
まあ膨大な情報量の中には、「これいらなくね?」てのも幾つかあったけど。
ところで、今回のゴジラの設定は1992年に発表された巴啓祐の漫画、「神の獣」に登場する怪獣オーガの影響をかなり感じた。
巴啓祐は早くに断筆してしまった人で、「神の獣」も絶版になって久しいのだけど、24年経った今でも全く古びてない。
古本を探し出す価値はある。

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