しめじゃん

シン・ゴジラのしめじゃんのレビュー・感想・評価

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)
4.3

正直、この作品って視覚的なエンターテイメント性には致命的に乏しくて、全編通して観てもゴジラが○○を○○して○○する描写くらいしか目で見て興奮するところはない(詳しくは劇場で観て笑)。

この作品の一番の魅力。それはこの作品が、あの3.11のほぼオマージュに当たることだと思う。

政府は、何が起こっているのかわからない状況の中で、およその憶測だけで右往左往し、決断を渋り、決断を誤り…さらには責任を逃れ、そのくせ他の国からの軍事的支援には苦言を漏らして、最終的にはすがりつき…

どうしようもない状況の中で、どうにかしなければいけないのに、結局、なんにもしないで突っ立ってる。そんな尻の重い(くせに次期首相だけはすぐに決まる)日本政府の、鈍臭くて憎たらしい部分に、この作品は最も重きを置いて描いてくれている。風刺である。

東日本大震災を経験した日本人だけが理解し、他国の人にはどれだけ口で言ってもわかってもらえない"記憶"。この作品は、その"記憶"を"ゴジラ"を利用してそっくりそのまま絵にしてくれた、そんな映画な気がする。

そして何と言っても、その中で光る"日本人の魂"みたいなものもテーマとして強くて。
みんなで協力して、みんなで考えて、寝ないで悩んで備えておにぎり食ってお茶飲んで…で、すこぶる頑張る。
一人の英雄に頼らない。みんなで共闘する。そんな描写が、なんだかとても嬉しくなる。背中を押される。

そういう意味で、この映画は世界に売り込んでも全く引け目を取らない、むしろどんどん世界に売り込んでもらいたい素晴らしい映画だと思う。これがニッポン人のやり方なんや!っつって。

確かに役者はヘタクソ。恐ろしいほど台詞回しが下手だし、何言ってるのか一切聞こえない。某石原さんなんてあまりにバカらしくて笑っちゃう。あんなの役者じゃない。
それにCGもお粗末でチープ。酷く興ざめしてしまう瞬間も少なくない。ほとほと泣けてくる。

でも、そんなマイナス要素を加味しても、この作品は他の邦画群の中で唯一キラリと光る傑作だと思う。
むしろ字幕つけて日本語の分からない人達に観せた方が評価が上がるのでは…?そんなことを思い、僕はまだ邦画の可能性を諦めきれずにいるのでした。以上。








ゴジラってのは怪獣と怪獣が闘う映画じゃない。

ゴジラが他の怪獣をやっつけてくれる、それは後付けのエンターテイメント。

『ゴジラ』は、日本が経験した未曾有の事態を、日本人が経験した辛く苦しい想いを、誰が観ても分かるように解読して世に知らしめる為の、一つの方法。一つの手段。
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