Ancojam

シン・ゴジラのAncojamのレビュー・感想・評価

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)
5.0
現実vs虚構

今作のキャッチコピーはこうなっており、被災というクリティカルな問題をゴジラに重ねている。加えてとてもフォトジェニックなシーンの多い作品であり全編に渡って効果的に余白を使っている。

今回、庵野監督はアニメーション畑で獲得した一枚画の力を最大の効果を持ってゴジラ映画に与えた。
目まぐるしく切り替わる人物のバストアップカットや、ロングショットを悠然と移動するゴジラはもちろん、これまでかと説明的に挿入されるテロップまで画面構成の一部になる。

広角による扇動感や、望遠、俯瞰による画の対比が素晴らしく圧巻の映像体験をさせてくれる。

どこからモノを撮れば重さやそれによる迫力を演出できるか、画角に何を収めれば神格化した映像として表現できるのか、人の心象風景を描くのにふさわしい背景は何か、望遠の圧縮効果は、特撮らしい日本の風景は時間は、またゴジラが未知を持って我々を驚かせるならどんな火炎放射をするのか、、、。
庵野監督はもうずっとこんな事を考えてきたのだろう。
捲したてるように進む展開はエンターテイメント性に富み、余白は日本を写実的に写す。

ここ十数年アニメが養ってきた確固たる実力と邦画や映像の美的作法が合わさり、進化し続けることを明示してくれた非常に力強いゴジラ映画。
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