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シン・ゴジラのEruMiのレビュー・感想・評価

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)
4.0
岡本喜八と初代ゴジラへのリスペクトが全開です。
ゴジラの進化、飽きさせない工夫という意味でも日本政府に迎撃の時間を与えるというシナリオの整合性の意味でも、そして劇中では明確に語られないゴジラの出自を考えてもとても良いアイデアと思いました。
パトレイバーが元ネタという話もありますが。
ゴジラ初登場にはかなりビックリ。

熱線放射のシーンは巨神兵東京に現るをもっと金と時間を掛けて作った感じでナイスです。
申し分のない神々しさ。
鷺巣詩郎の音楽はいいですね。
一瞬のクローズアップもなく、いとも簡単に総理大臣以下重要閣僚が死ぬところもいい。
圧倒的な力の前で人間の権力などなんの意味も成さないみたいなの、絶対入れて欲しい要素です。

謎の巨大生物が東京に上陸したらという状況をリアルに想定した展開なので自衛隊が頑張るのは当然、これを日本万歳プロパガンダ映画と言う人はちょっと日教組に洗脳され過ぎではないでしょうか。
ゴジラデモの様子がちょっとだけ出てきましたが、「ゴジラを殺せ」「ゴジラを守れ」とあとなんだっけ、3種類位コールを録音してどれにも聞こえるようになってるそうで、確かに何と言ってるのか特定できないようになっていて、中々イカした配慮というか描き方だなと思いました。

2年前ギャレスエドワーズ版が原発と日本を登場させると聞いて淡い期待を抱いていましたが見事にスカスカで悔しい思いをした私でも納得の3.11以降の大災害フィクションを作ってくれました。
VFXは流石にアメリカに及ばない部分が多く見られますが、それでも充分日本にしか創れない災害と人間が描かれております。

石原さとみの英語が酷いという感想が散見されますが、日系のアメリカ特命大使と言う役柄から考えれば充分な英語力とは確かにとても言えません。
しかしアイドル上がりの小娘女優がECCで頑張ったと思えば中々悪くないのではという気もします。
とは言え根本的に劇中の役割を考えても石原さとみはそもそもキャスティングミスではないかという思いは拭えません。宗教関係のコネクションでしょうか。

ラストシーンは色々解釈があるようですが、いずれにしても私はあまり好きではありません。
陳腐だと思います。
まああそこからシンエヴァに繋がるとかなら逆に面白いかなという気もしますが。

折り紙の下りは適当な折り紙をパタパタしながら喋るとかじゃなくて謎解き的におおってなるようなちゃんとした見せ方があったし普通に出来たはずと思いますが手抜きでしょうか。
この辺の謎を追うディテクティブ要素はもっとあって良かったのではという気はします。
とは言えそうなると色々詰め込みすぎになりかねないので何処を削るかと言えばよく考えれば何をしているかよく分からない石原さとみのパートを削るのがいいのかとも思いますが、「私の祖国に同じ間違いを三度もさせたくない。おばあちゃんの国だもの」というような重要なセリフがあるので石原パートはそうやすやすと削れない。よく考えたらカヨコはやっぱり重要な役なんですよね。アメリカと日本の間にいる人間として。

苦手とされる人間ドラマですが、岡田斗司夫の言う「演技的不気味の谷」を一定のルールである意味機械的に抑え込むことで全キャストを「キャラ化」することに成功しており役者の演技があまり鼻に付きません。
これもかなり画期的です。
ただ、飛び道具的な解決法なので毎回使える技じゃないのが気になりますが。
しかし逃げるだけの民間人エキストラの動きやセリフは結構酷く、ああいう細部にリアリティは出るのでそこはちょっと残念でした。

日本人にはあるあるな独特のポリティカルフィクションが海外でどう見られるのか反応が楽しみです。
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