キンキン

シン・ゴジラのキンキンのレビュー・感想・評価

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)
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 物足りない。そう思う自分に驚いた。ゴジラといえば破壊を前提とした怪獣映画として構えているので、本作の終盤にあるスペクタクルは予想以上にやっていたのが楽しかった。が、気持ちは舞い上がらない。
 なぜか?CGがちゃっちい?そう思っても、3.11後の日本を想起させる内容には、テレビで何度も取り上げられる安っぽい災害シュミレーションCGが浮かび「身近さ」が感じられたので悪いとは思っていない。

 私が面白かったのは、前半のキャストとテロップの使い方がリズムを取っていた部分だ。これは、「エヴァンゲリヲン 新劇場版:序」のDVDに入ってるDisc2と同じ。
 人物の顔がはっきりと全面に出たりするとちょっとのシーンでも印象を決定づけ、目まぐるしい程の情報量に追いつけなくても、まるで映画が踊っているようだった。だから、後半に乗り切れなかった部分があるのだろう。

 そしてもう一つ面白かったのが、キャスティング。事前情報を抑えて鑑賞を心がけるようにしていたので、その量に驚かされる。もうあのCMの石原さとみにしか見えないし、ドラマ「民王」で内閣総理大臣の秘書を演じた高橋一生もいれば、総監督が樋口真嗣のドラマ「MM9」から松尾諭もいて、内閣総理大臣役の大杉漣に至っては今年の3月に放送したNHKドラマ「原発メルトダウン 危機の88時間」で福島第一原発で吉田所長を演じている。などなど、妙に繋がりが浮かんては別でワクワクしていた。ジャーナリスト役の三浦貴大と川瀬陽太が出てくるところなんて、昨年の「ローリング」からかと思うと、ニヤリなんてね。
 スタッフロールを見ては、まだまだ発見できなかった人物がたくさんいる事から、もう一度観たくなる。

 庵野秀明監督の実写といえば「ラブ&ポップ」があるけど、これと似たアングルが本作にも出ていた。エヴァンゲリヲンと同じ様に人物配置やカット割りに音楽の使い方を見ていると、アニメと同じ事をしているのがわかる。だから、人物と背景の際立ちが見事でそこにはいたく感動したなー。近年のハリウッド映画なんて、人の会話をカメラがただゆっくり動いて撮るだけで絵として面白くないから。アニメを手がけた監督は、やはり絵を大事にしているのだなー。

 3.11後、日本では放射能測定器が街中で見受けられるようになった。以前、それが数値を表すのを見ては「まるでSFの世界みたい。」と、エヴァの世界と比較する人がいた。今回の「シン・ゴジラ」を見ると防衛線だったりがまんまエヴァと同じなので、「今の日本はあの世界に到達したのかなー」と、あながち思うのでした。
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