いやんばかんあはん

シン・ゴジラのいやんばかんあはんのレビュー・感想・評価

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)
3.5
この映画を自分の中で消化するのが
これほど大変とは思わなかった・・・(^_^;)

ひとまず言えるのは
オッサンなら手放しで絶賛するだろうという事

そして間違いなく変な(カルト)映画であり、後世に語り継がれるであろう問題作だという事

かくいう俺は
それほど面白いとは感じなかった。
面白いというより、圧倒。

何度もリピートして考察したくなる
そんな魅力・・・いや、魔力を感じる怪作。


開始から30分くらいまでは夢中だったが、それ以降、庵野秀明の悪い部分が炸裂しトンデモ展開に突入するので注意が必要。

タイミングとしては
女優 石原さとみ
彼女が登場した辺りから異変が起こる。

カヨコ・アン・パタースン
石原さとみが演じる米国大統領特使の名前。

役柄がどうこうしたわけでもないが、演じ方に問題があるというか、とにかく異物感がすごい。

唯一、
作品の色に染まり切ってない。

そのせいで調子を損ねはしたが、物語の進行上感じた異様さは決してそれだけではないのはわかる。

もしかしたら
全く違和を感じない人もいるかと思うが・・・

急にシリアスムード全開になったり

ゴジラの襲撃を食い止める為に
憲法9条を外視して自衛隊を出撃させたり

エヴァを彷彿とさせる様な
特殊な作戦を企て実行したり・・・


まさに庵野ワールド全開なワケ。


しかし序盤は文句ナシに最高。

有事発生によってザワつく官邸内の様子をリアリズム&コメディテイストで執拗に描いている。

ゴジラが都心でいくら暴れ回っても
逃げ惑う避難民にカメラは全く向かない徹底ぶり。

演出は完全エヴァンゲリオン。

モノ凄いハイテンポで進行し、専門用語を多用しマシンガンばりの早口で大勢の官僚や政治家が講義の嵐を繰り広げる。

そして人物が移り変わる度に、その人物の名前であったり、肩書きなんかが
明朝体のテロップで表示される。

表示される時間も秒速で切り替わる。読ませる気はゼロ。

つまり、言い換えると、名前や肩書きなんていうものはこの映画にとって何の意味もないという事。

そこで思い出して欲しいのが豪華キャスト陣の数。
総人数 驚異の328人。
何故これほど人の数が必要だったのか・・・?

ゴジラという大怪物を相手に日本人はどう対抗するのか?

個々で戦うのを拒み、団結を選ぶという事に繋がる。

328という数字は塊を分離させた数であり 、この映画の中ではまとめてひとつの集団・・・。

ニッポンという群れを総称した1人の登場人物という捉え方に行き着いた。

ゴジラという1の怪物に対してニッポンという1の群れで立ち向かう・・・。

ある種、
日本応援映画にも成り得るのではないか?

というのも、本作でのゴジラ襲来による日本の被害描写が、東日本大震災での被害とそっくりだったから。

初代ゴジラでは原爆での恐怖を投影させており、2作目以降からは子供向けに徹底し次第に丸みを帯びていった。

さらにハリウッド版では、単なる初代ゴジラのリブートに過ぎず・・・。

それがシン・ゴジラでは、新解釈という新たなる発展を見せた。

これは本気ですごいというかこの手があったかと、全国の特撮ファンを虜にしたのだと思う。

そこに気づけたのは樋口真嗣と庵野秀明の特撮愛あっての事かと。

ゴジラの造形を担当したのは井口昇作品でお馴染み 西村喜廣。

ゴジラの第二形態を期待通りのキモいデザインで仕上げており、それがまた庵野テイストに染まっているという。

BGMもエヴァンゲリオンだったり伊福部昭を流用したり。

ゴジラ新作を引き立てる為に最上の音楽の扱い方をしている辺りも流石。

インテリ向けかとは思うが、今この時代に、こういった作品が世に出されたというのは何とも感慨深い。