Kanta

シン・ゴジラのKantaのレビュー・感想・評価

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)
4.7
怪獣映画が本来持つ"破壊の快楽性"を復権させ、現代に溢れる様々な意味を嘲笑うかのような作品。
それはゴジラがプリミティヴな破壊の存在として描かれる理由であり、庵野特有の"物語"だと思う。

本作に、憲法批判の暗示を見出したり、東日本大震災のメタファーを見出したり出来るだろうが、それを馬鹿にするようにゴジラはただひたすら壊す。
そもそもゴジラは全てをぶっ壊す奴で、それ以上でも以下でもないから当たり前だ。

批判やメタファー(らしきものたち)が重層的に紡がれるのも、曖昧な表現の重なりとしてむしろゴジラの"破壊"を際立たせる。
重層的な意味達は、物語として一本に紡がれ(全てに等しくキャプションが付いていたように)、ゴジラの存在を際立たせる背景として集約されている。

"重層的な意味"とか"曖昧な表現"というのは、この映画において"萌え"に直結する。本作では各キャラがきちんと萌え要素を持っていて、唐突に90年代っぽくてわかりやすい萌えを出してきたりする。これはエヴァから引き継がれたものだと思うし、脱物語的物語という共通点をもつ怪獣映画とすこぶる相性がいい。

要は、本作はなんの意味も持たない怪獣が荒れ狂うだけの映画を作ることで、そこにすら意味を見いだしたがる現代人を批判しているのだ。
…と、考える僕を、庵野とゴジラが嘲笑っているような、そんな映画だ。
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