クラリスロマイシン

シン・ゴジラのクラリスロマイシンのレビュー・感想・評価

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)
4.8
映画館で観たが、レンタル開始を期に再鑑賞。

外国映画の多くの主人公のように"個"で戦うのではなく、集団で危機に臨むという、実に日本的なスタイルでゴジラに挑む人々が描かれるのが本作だ。
外国映画でもそのような作品も確かにある。
しかし本作ではそれが利点でもあり、同時に欠点でもあるという視点を失うことが無いところが異なっている。
そして、そのことが本作をより特別な存在にしている。

確かに、これぞ「まったく想定外」の災害だろう。
しかし、矢口を始めとする巨災対のメンバーや彼らを支援する者たちは、起こった現実を直視し、冷静に(しかし途中絶望的な状況に怒りを顕にしながらも)、問題の解決に向かい猛進する。
「想定外だから仕方ない…」こんなことを言っていたら映画の中の日本、いや世界は間違いなく破滅していただろう。

「避難とは、住民に生活を根こそぎ捨てさせることだ。簡単に言わないでほしいなぁ…」
元農水相にして新首相役の平泉成さんの台詞である。
"人災"とも言われるあの災害、その復興のために造られた庁のトップである人物(偶然にも?庵野監督のアニメ作品のネクタイをしながら)の発言が注目されているが、残念ながら彼はこの映画を観ていないか、あるいは観たもののこの台詞に何の想いも湧かなかったのだろう…。

しかし、「自己責任」と言われようと、避難先で辛い目に会おうと、挫けず戦い続けている人々がいる。
「スクラップ・アンド・ビルドでこの国はのし上がってきた。今度も立ち直れる。」
今も日本中で戦い続けている彼らには、映画に託されたメッセージが伝わったはずだ。