Unyanyaka

ディオールと私のUnyanyakaのレビュー・感想・評価

ディオールと私(2014年製作の映画)
4.5

ディオールと私

2012年、オートクチュール未経験のラフ・シモンズがディオールのデザイナーに就任してから最初のコレクションに至るまでの8週間の様子。

注目すべきは通常業務(顧客対応)と平行しながらラフの要求に応えていく職人たち。
質素を求められた戦後、女性たちから熱い支持を受けた、ディオールに脈々と受け継がれる「フェミニン」「美しいシルエット」「節度ある装飾性と豪華さ」「ロマンチック」を自分の持ち味を持って解釈していくデザイナーの求める形がこの世に実現するのは、メゾンを動かしてきた心臓部分とも言えるアトリエがあってこそだ。
外の人間が目にするのはディオールの美しい表皮だが、その裏の職人たちの仕事は知れば知るほど熱いものを感じる。日々布を扱う職人たちの実際は、正直ショーの華々しい様子とは違って白衣を着たその辺を歩いていそうなおばちゃんたちがほとんどなのだが、なんだかんだ無茶な要求に形で返すことができるのは彼女たちが素材や技術への広い知識と経験をもつプロだからだ。(本当に格好いい)
そのシーズンのディオールの顔となるデザイナーには多大なプレッシャーがかかるため、非常にナイーブになったり気難しさを露わにすることも多々あり、そんな時も彼らは扱い方を知っていて、広く受け止める器の大きさがアトリエの強度を感じさせる。
正直、表立つ唯一無二の存在にこそ価値があり、それがトップなのだと思っていた。恥ずかしながら職人という存在はその下にくる存在だと若干見下していたところもあった。
確かに彼らの名前が大々的に出ることはないのだが、自分の持てる技術を持って最高のものを作り上げることで世の中と関わりを持つ様子はたしかにプロフェッショナルで唯一無二とはまた違ったとてつもなく格好いい存在だ。
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