日本でもシャラマンみたいなファンタジーを撮る人が出てくると思ってはいたけど、まさか山田洋次監督だとは思わなかった…。
序盤はこの映画を観ずに避ける人が予想する通りのような展開で閉口。
そもそも大学生のコージに二宮和也、その母親に吉永小百合というのも年齢的に無理があり、このキャストなら原作が戯曲なんだから映画じゃなく舞台にすべきだったと思う。演技もオーバーで舞台用みたいで画面でみるのはちょっと恥ずかしいくらいだった。
コージはお喋りという設定とはいえ、うるさ過ぎで心底「ちょっと黙ってて」と思ってしまった。ということは二宮和也の演技プランが成功ということか。
女の子が遊びに来ているコージの部屋に母親がお茶を持っていきマズい雰囲気を作るという前時代的な演出は成功していた。それも二回もやっていて笑った。
「これは全て、息子が死んだショックで頭が狂ったおばさんの妄想なのでは?」と思ってしまうほど序〜中盤は退屈なんだけど、その退屈しのぎの邪念が正解だったと受け取れる終盤に流れ着いてビックリ。。その答え合わせをしたいのでまた観たい。。
自分が死んだことに気づかない人が幽霊になる(それを描いたのがシャラマンのアレ)という説があるけど、ならば、不謹慎ながら原爆で亡くなった方々の多くが幽霊になってしまうだろうなと思った。この映画のコージは自分が死んでいる事を自覚していた。そういうところもこの映画に深みを与えている。
心が汚れたおっさんになってしまったので、いわゆるトンデモ映画みたいなものを楽しむ余裕がなくなってしまったけど、本作は凄く楽しめた。一体どの部分にそこまでフィールしたのか自分でも分からないので、1日経ってもまだこの映画のことを考えている。その点でも私にとっては傑作でした。