iyuki08

母と暮せばのiyuki08のレビュー・感想・評価

母と暮せば(2015年製作の映画)
3.0
切れ味冴え渡る衝撃的なOPから一転、ダラダラとした地味な会話劇が続く。たしかにグッとくるストーリーだし編集も現在と過去が交錯するなど凝った形になっていたが、私の心が穢れているからか、あと何時間こんな毒気のない話を見せられるんだとうんざりし、まさかのリタイア。

死んだはずのニノが吉永小百合の前に出てくるというファンタジーで、それはいいのだが、なにせ様々な意味で、"お上品すぎる"のだ。お上品すぎる世界そのものがファンタジーのように感じられて、捻くれ者で有名な(?)私には受け付けなかったらしい。

例えばニノのフィアンセなんかは、ニノの死後3年も立っているのだから、隠れて男の一人や二人作っていてもいいじゃないか。なぜ頑なに操を守っているのか(最後まで見てないから、実際はとんだドビッチだった可能性も捨てきれないが。もし中盤でそういう種明かしがあったらゴメンナサイ)。
いや、気持ちはわからなくはないのだ。ただ、なんだろう、臭い物に蓋をすると言ってしまえばあまりに口が過ぎるというか、この映画の世界に感動された方々のまっすぐさ…と言うべきか、そういう人として本当に正しい部分に本当に申し訳ない気持ちになるし、自分の感性のねじ曲がり具合を痛感せざるを得なくてほとほとイヤになるのだが、そういう「高潔さ」がどうにも、私には嘘くさく感じられたのである。
美しすぎるものってこんなにも受け付けないものなのかと、自己を再認識する結果となった。(手塚治虫の漫画で好きなTOP3に「アラバスター」が入るくらいだからな…)

もっとえげつないでしょ?あんたら(人間達)、っていうことなのだ。私ほど捻くれた人間になると、最初から全開でキレイキレイしちゃったら、「こいつなに企んでるんだ?」と、逆に怪しさしか感じないのである。

つまり矮小な私にはこの映画、まっすぐ過ぎて受け止めきれませんでした!ということだ。

繰り返しになるが、OPは凄まじくよかった。こういった原爆の描写はまさに晴天の霹靂。衝撃的、と言わざるをえない。その後が大いに問題山積みじゃなさ過ぎて困った。

本当に、なんか、観賞して自己嫌悪に陥る映画など初めてなもので、なかなか貴重な観賞体験であった。

いろいろほんと、スンマセン。
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