【戦争直後の長崎】
BS録画にて。
原爆投下で死んだ長崎医大(現・長崎大学医学部)の学生(二宮和也)が、幽霊(?)になって、夫と長男(二宮和也の兄)を亡くして助産婦をしながら一人暮らしている母(吉永小百合)のところにあらわれて、会話を交わしながら、終戦後の母および婚約者(黒木華)の暮らしを見守っていく、というお話。
戦後まもないころの長崎を舞台に、物資が乏しい中で庶民がどう生きていったかを描いています。
メインになるのは婚約者(黒木華)の身の振り方ですが、まあこれは想定内の筋書きです。
これに限らず、山田洋次の作品ということもあり、全体が想定内の範囲に収まるようにできています。
突飛なところがないのは長所とも短所とも言えるわけで、安心して見ていられる代わり、もう少し何か、という気がしないでもありません。
良かったのは、小学校教員となった黒木華が教え子の少女に付き添って、少女の父が出征後にどうなったかを知るために役所に行くシーン。さりげなく、ぐっと来ました。
ちょっと面白いのは、加藤健一演じる「おじさん」です。戦後の物質不足の中で、闇で手に入れた食品などをよく吉永小百合のところに持ってきてくれる。妻を亡くしていて、実は吉永に気があって・・・という設定。うん、うん、男としてよく分かります。「男はつらいよ」ですよね(笑)。
戦時中、学徒動員が行われる中、医学と理工系の学生は出征を免除されていました。二宮和也もそれで医大生にという設定ですが、原爆が長崎に投じられてしまったために死を免れることはできなかった。運命の残酷さですね。
私的なことですが、私の父(故人)も理工系の専門学校生だったので、兵隊には取られなかった代わりに工場に動員はされたとか。ともあれ死なずに済んだので、戦後に結婚して私が生まれたというわけです。父の次兄は戦死しています。