モーフィー

無垢の祈りのモーフィーのネタバレレビュー・内容・結末

無垢の祈り(2015年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

なんちゅう救いの無い映画だ。これ程までに禁忌と呼ばれる社会問題を生々しく描けるのか。ネグレクト、虐待、性的暴行、殺人、解体、カルト宗教、いずれも全くのおふざけ無しで描いてる。

主人公フミは小学生の小さな女の子。学校では虐められ、父親からは虐待と性的暴行を受け、宗教にどっぷりハマった精神病の母親からは放置されている。地獄な毎日から解放される事を望んでか、近所で起きている連続殺人事件の犯人に向けて「アイタイ」と廃工場の地面や壁にチョークで描きまくっていた。最後には壮絶な虐待の末に片目を父親に潰されるが、やっと会いたかった殺人鬼に出会える。そして叫ぶ、「殺してください!」

もうね...こんな絶望映画久々過ぎる。父親から虐待されて母からも全然助けてもらえず、逃げ場がない。でもこんな地獄はきっと世界中で起きている事なんだろう...。理不尽で冷酷な世界。子供の時に虐待されたらそりゃあ人格歪むわ。

「子供が守られる世の中にしたい」そう本気で思えた映画でした。

最近ミッドサマーの様なダークな物語に綺麗な映像で光に溢れた映画が流行っていて、自分もそういうの凄い好きなんだが、今作はとにかく映像がずっとジメッとしていて薄暗い。川崎の工業地帯に、昼なのに薄暗い空。田んぼとか自然も一応映るんだけど、全く癒しの要素はない。非常に無機質で温かみの無い映像。でもほのかに感じる退廃美が印象的だった。汚れがタイルに染み込んだトイレ、工業地帯に大量に入り乱れた金属パイプ、夜自転車に乗る少女のバックに映る一本の煙突から出る火。少女が廃工場で終始ウロウロしていたのは、ひと気の無い無機質な朽ちていく建物が、人に対して絶望していた少女の唯一安心できる場所だったからなのかもしれない。

こんな映画を好みって言ったら人格を疑われるかもしれ無いけど、非常に印象に残る映画だった。
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