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ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲のRのネタバレレビュー・内容・結末

3.3

このレビューはネタバレを含みます

自宅で。

2015年のハンガリー/ドイツ/スウェーデンの作品。

監督は「私というパズル」のコーネル・ムンドッツォ。

あらすじ

折り合いの悪い父親ダニエル(シャンドール・ジョーテール「サウルの息子」)の元に預けられることになった多感な少女リリ(ジョーフィア・プソッタ)。彼女は雑種の愛犬ハーデルを大切に飼い、いつもどこにでも連れていた。しかし、その頃、雑種の飼い主に徴税を課す法律が出来上がり、元々ハーデルのことを煙たがっていたダニエルはリリの前でハーデルを逃してしまう。ハーデルはなんとかリリの元に戻ろうとするのだが、道中、人間に虐げられ、保護施設に入れられてしまったハーデルは他の犬たちと共に人間たちに復讐の牙を剥く!

U-NEXTにて、当時「犬版「猿の惑星」という触れ込みでそれなりに気になっていたんだけど、そのまま忘れちゃっててこの度U-NEXTで配信終了間近で発見し、鑑賞。

お話はあらすじの通り、少女と犬のハートウォーミングストーリー…なんてものはどこにもなく、徹頭徹尾シビアにワンちゃんが酷い目に遭う内容となっている。

冒頭、人っ子1人いない都市部を自転車で爆走する少女リリ、その背後から全然映画映えしない雑種のワンちゃんたちが大挙して走ってくるインパクトあるショットからなぜこのような事態に到ったのかを描く形式となっている。

で、序盤は少女リリと愛犬のハーデルの生活が描かれるんだけど、まずリリを演じたジョーフィア・プソッタがめちゃくちゃ美少女!!多分何年か後にこのまま成長してれば、モデルさんとかになってるんじゃないかってくらいすごく顔がいい。ただ劇中では常に不貞腐れた表情なのは多分環境下のせいではあって、父親ダニエルの元で過ごすことになっても、どこかやさぐれた感じはあるんだけど、唯一愛犬のハーデルにだけは心を許していて、その時だけは年相応のいたいけな感じがあってキュート。マジでどこにでも連れ歩いて、所属する楽団にまで連れていっちゃって、コンマスの先生に何言われようとも物ともしない跳ねっ返り娘感がすごい笑。

で、そんなリリを超える存在感を発揮するのが主人公ハーデルである!どうやら、実際は2匹のワンちゃんを使って撮影したらしいんだけど、その年のパルムドッグ(パルムドール賞の犬版)を掻っ攫ったことも納得の名演を披露する。例えばリリといる時には忠犬っぷりを発揮するんだけど、リリと離れ離れになってしまった時のどこか心細そうな表情、その後出会う人間出会う人間みな非道で段々と人間に対して憎しみを抱くようになるんだけど、そこでの首を低く構えて牙を剥き出しにして相手を威嚇する表情とかマジでこえぇ!一体どうやったら、こんな感情がスクリーン越しで伝わってくるんだってくらいの名演っぷり。

あと、名前はないけど、道中知り合う白と茶色の小型犬のワンちゃんも良かった!!ハーデルとは野良犬がたむろう工事現場みたいな場所で知り合ったことで行動を共にするんだけど、割と体格があるハーデルの横をチョコマカのつぶらな表情でついてくる様がめちゃんこ可愛くて、ハーデルがはぐれても「こっち!こっち!」と吠えて教えてくれる仕草とかかわいすぎっ!!

で、中盤からはお互い離れ離れになってしまったリリとハーデルそれぞれのパートを交互に描いていくんだけど、どちらもどんどん闇堕ちしていく。

リリはハーデルと離れた後、ハーデルを逃したことで元々折り合いが悪かったダニエルともどんどん険悪になっていくし(まぁ、最後は和解するんだけど)、挙句に楽団のイケメンに一目惚れしちゃって、一緒にクラブについていくんだけど、そのイケメンは同じ楽団のカールヘアーの女の子とふけこんじゃって、リリは1人クラブでやさぐれて、そのままふて寝したところ、翌朝警察が来ちゃってて補導と非行少女一歩寸前までいっちゃう。

で、もっと酷いのがハーデル。リリと離れた後、保健所の職員から追われて捕まりそうになっちゃったり、匿ってくれたホームレスに売られて闘犬のオーナーのクズ親父に飼われてしまったのが運の尽き。「お前は強くなる!」と動物愛護団体も真っ青な厳しすぎるトレーニングと肉体改造を施され、身も心も闘犬スタイルにカスタマイズされちゃう。で、迎える試合、相手のドーベルマンと血だらけになりながら闘う姿とかマジで可哀想だった。

で、そんな生活を強いられたことでどんどん人間を憎むようになっていくんだけど、闘犬オーナーの元から辛くも逃げ出した後、一旦は小型犬と再会し、束の間の自由を得るんだけど、そのあと遂に保健所に小型犬共々捕まってしまう。

で、後半スキをついて保健所の職員に致命傷(喉元を食いちぎる!)を負わせて、そこで捕まっていた大量のワンちゃんを逃した後はそのワンちゃんたちを先導して遂に人間に復讐開始。

まぁ、大挙してワンちゃんたちが一般道を走り抜けるシーンは逃げ惑う人々に比べて、「走るの楽し〜い!」という感じで人間に見向きもせず走り抜ける様がなんか温度差があってシュールで微笑ましくもあるんだけど、追っ払われたレストランのシェフだったり、闘犬のオーナーのクズ親父の元に現れて、他の犬たちと明らかな悪意を持って襲いかかる様はいくら犬と言えども脅威に感じる恐ろしさ。

で、クライマックス、遂にリリと再会するんだけど、その頃にはもはやリリと過ごした記憶よりも人間に対する敵意の方が優っちゃってて、あぁもうリリも襲われちゃうのかぁ?とヒヤヒヤしてたら、リリがリュックに入れてたトランペットを吹き出したことで、リリと過ごした在りし日の記憶が呼び覚まされ、他の犬共々落ち着きを取り戻す。

最後はリリと百頭くらいいるワンちゃんたちがみんな道路で寝転んで終わるシュールなラストなんだけど、どこか神聖な感じもして印象的。

まぁ、触れ込みの「犬版"猿の惑星"」要素はほとんど終盤だけで、あとはうんざりするほど犬が酷い目に遭う作品内容ではあるんだけど(小型犬が撃たれて死んじゃうところとかやめてー!と思った)、まぁワンちゃんが爆走するシーンとか見たことないシーンもあったので2度は観たくはないけど、観てよかったです。
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